第12章 サスケ君
サスケ君と、私は正反対の道。
ここでお別れ。
「花奏、ここで…」
「分かってるよ、言わないよ、誰にも」
サスケ君の言葉を遮るように答えた。木ノ葉の みんなごめんと思いながら話を続けた。
「じゃあ、サスケ君またね」
「花奏、いっしょに来ないか?」
サスケ君はまたそんな心にもない事を言う。知ってるんだよ。サクラが泣いて連れて行って欲しいって言ったのに断った事を。だから朗らかに笑った。
「サスケ君、ありがとう、冗談でも嬉しい。私は離れていても、サスケ君がずっとーー」
好きだよ、は言えなかった。頭を急に引き寄せられ、深く優しいキスをしていた。
「花奏、お前は雷嫌いよりも、鈍い方を いい加減治せ」
「えっ!?……サスケ君?」
「ああ、花奏は、昔から鈍感な所も変わらねーな。ウスラトンカチだからな」
ふわりと顔を緩ませたサスケ君。
「花奏……、ありがとう。少し元気が出た。じゃあ、またな」と言って、木ノ葉とは逆の方向へ駆け抜けた。
夕日が沈む。森を走り去る彼の姿が小さくなって消えてゆく。頭の中は兎に角、パニック状態だった。
意味が分かった瞬間、自然と顔が緩んでゆく私。
サスケ君と今別れたはずなのに、
ずっと、ニコニコと笑みを浮かべる。
またな、と言ってくれた。
甘いキスもしてくれた。
最後にほんの少しだけだけど、小さい頃仲良く遊んでいた時と同じように、優しく笑ってくれた。
サスケ君のお父さんも、お母さんも、イタチさんもいたあの心地よい笑顔。
「ウスラトンカチって何よ、もう……」
ふふっと一人で笑って
木ノ葉隠れ里へ、紅く染まる道を歩く。
たまには雨に濡れて
帰るのもいいのかも。
今、もし雨が土砂降りでも、
心は朗らかだと思う。
単純な思考回路も、昔から変わらない。
すっかり身体は元気になって、足取りも軽い。
雷も、なんだかへっちゃらな気がした
ラッキーな帰り道だった。
fin