第6章 約束
まっすぐ見つめる瞳はとても澄んでいた。少し八の字に曲がった眉がどこか哀しげで、まるで捨てられた子犬のようだ。
「なら、これから一生私のこと抱かないで。」
私はその視線から逃れるように目を逸らし、そう言った。
彼は思わず「えっ!?」と驚きの声をあげる。それはそうだろう。『その為』につれてきたのに、そんな条件は飲めるわけがない。
「できないならもうこの話はおしまい。」
私は彼の手を振り払い、ソファーから立ち上がった。
「待って!」
彼は私の肩に手をかけ、制止する。
「わかった。君には手を出さない。」
次に驚いたのは私だった。
「なに…言ってるの…?」
「君が言ったんだろ。もう君のことは抱かない。その代わり、俺に笑顔を見せてくれる?」
真剣だった。私には理解出来なかった。
それじゃぁまるで、彼が…。
私は顔が紅潮し始めるのを感じた。
どうしたらいいのかわからない私は、とにかく赤面を隠すために背を向けた。