第8章 緋色のエピローグ
「かおりさんは、どこまで僕のことを知っているんですか」
公安との一悶着後、初めて安室さんこと降谷零と顔を合わせる時が来た。
喫茶エラリーを二人で開け、なんとか昼のピークタイムを乗り切った。
夕方近くになってようやく客が途切れると、彼が切り出した。
「先日あんな事があったのに、かおりさんは僕に何も聞いてこないんですね。だから全て、知られていると仮定して話します」
「・・・はい」
「僕の正体は安室透ではありません。バーボンでもありません。僕は、警察庁の公安にいます、降谷零です・・・」
既に知ってはいるけど、口は挟まずに聞く。
「僕が組織に潜入中だと知っているのは、公安のごく一部の人間だけだ。君達には知られてしまったようだけど、このことは決して口外しないように」
「もちろんです」
「僕達は、日本をあの組織から守るため活動している。君達も目的は同じようなものだろ?」
「・・・君達って言うのは?」
「かおりさんに、江戸川コナンくん、FBI連中、それに、赤井秀一・・・」
彼の語気が強まった。顔付きも少し怖くなって。
いつものニコニコした安室さんとは全く違う・・・
「そうですね、みんな組織の壊滅を望んでます」
「FBIと手を組む気はないけど、君達の邪魔をする気も無いから。赤井が生きていたことは、組織には報告してない・・・」
「そうしてくれると思ってました・・・それもコナンくんの推測通りです」
「・・・コナンくんか、さすがだね。でも赤井個人に関しては話は別だ。かおりさんは赤井と知り合いなのか?」
「知らないと言っても信じてくれないんでしょ?」
「ああ。奴は何処で何をしている」
「それはわたしには分かりかねます」
「へえ・・・」
「どうして秀一さんにそんなにこだわるの?」
「聞いてないのか?・・・そもそも俺と赤井は、気性も合わなかったけど・・・まあ、言えないよな。罪の無い人間を殺したなんて。奴は僕の親友を、殺したんだ」
益々彼の顔付きが怖くなる。
「ころした・・・?秀一さんが、殺したの?」
「そう。僕はその場に居合わせた」
背筋を、サーッと何かが通り抜けた。
「話すと長くなるけど・・・聞くか?それに宗介さんの事で伝えたいこともある」
「沖矢さんに遅くなるって連絡入れます」