第8章 緋色のエピローグ
ジョディさん達が帰り、後片付けをして。
特にする事もなく、何気なく優作さんの書斎・・・と呼ぶには凄すぎる図書館のような部屋に入ってみた。
この家で暮らし始めてしばらく経つけど、ここに入るのは初めて。
正確に言うと、子どもの頃には入ったことがあるけど。
奥にデスクがひとつあり、わたしはそこにある椅子に座ってズラズラと並んだものすごい量の書籍を眺める。
アガサ・クリスティ、エラリー・クイーン、コナン・ドイル、シャーロック・ホームズ・・・
記憶が蘇ってくる。
幼い新一くんに連れられてこの部屋で遊んだ。彼はホームズがどうたらって自慢気に話してたっけ。
新一くんは厄介な事件の捜査でしばらく家を離れてるらしいけど・・・元気にしているんだろうか。
たまには帰ってきたっていいのに。
そう言えば・・・コナンくんって、あの頃の新一くんと雰囲気が似てるかも。
いや・・・似てるどころか全く同じような気がしてきた。
まあ、遠いとは言え血は繋がってるんだから似ててもおかしくはないけれど・・・
それにしても小学生とは思えないコナンくんの頭の良さ。彼は並の大人以上の頭脳の持ち主だ。
まさか・・・いやいや、そんなことある訳無い。
新一くんとコナンくんが同一人物だなんて、ある訳が無い。
「かおり。ここにいたのか。探したぞ」
「赤井さん!なんかフラーっと入ったら昔の事思い出しちゃってつい・・・」
「どんな思い出だ?」
「小さい頃に母親に連れられてこの家に遊びに来たときのことです」
「聞かせてくれ」
母とこの家を訪ねた事、親戚と聞かされていたがテレビの中でしか見たことの無かった工藤夫妻に会って驚いた事、新一くんにこの部屋に連れられて来た事。
帰り際新一くんに「帰らないで!」と泣かれた事、記憶の中の諸々を話した。
大した話でもないのに、赤井さんは(沖矢さんに変装中だけど)終始にこやかな顔でそれを聞いてくれて。
「でもさっき気付いたんですけどね、小さい頃の新一くんって、コナンくんそっくりなんですよ・・・」
「そうなのか」
「コナンくんって頭良すぎるし、もしかして新一くんなのかもーなんて考えちゃったんですけど・・・有り得な」
「俺もそう思っている」
「ええっ!?」
「そう考えると全て辻褄が合うんだ」