第7章 緋色の帰還
その頃ジョディ達は何者かに追われていることに気付き、振り切ろうと必死で車を走らせていた。
かおりは紅茶をテーブルに運び、ポカンと二人のやり取りを伺っているフリをしながら、同時にテレビも眺めていた。
テレビでは、マカデミー賞の授賞式が中継されている。
工藤優作は脚本賞にノミネートされているのだ。
変声機付きのマスクを取った優作はゴホゴホと咳をした。
「少々風邪気味なので・・・マスクを付けてもいいですか?君やかおりさんに移すといけない」
「そのマスクじゃない・・・その変装を解けと言ってるんだ!赤井秀一!」
「変装?赤井秀一?さっきから何の話をしてるんです?」
しびれを切らした降谷はついに優作に掴みかかる。
ジョディ達は、追っ手から逃げ切るのはもう限界かと諦めかけていた。
テレビでは優作の最優秀賞受賞が発表された所だった。
「赤井さん、安室さんがもういつマスクを剥がすかわからない!出て!かおりさんは話を逸らして!」
コナンの指示が飛ぶ。
「ちょっと安室さん!何するんですか。それより沖矢さん!優作さんが最優秀賞ですよ!」
かおりは二人の間に割って入る。
ジョディ達の車の後部座席から姿を現した赤井は、後ろを振り向き、公安の追っ手に顔を晒す。
降谷のスマホには来葉峠の仲間からの着信が入り、赤井が現れたと報告を受ける。
そして目を大きく見開き取り乱す。
姿を現した赤井は、不安定な車の中から追っ手の車のタイヤを銃で見事撃ち抜き、追尾不能にさせる。
「何!?赤井が拳銃を発砲!?それで追跡は!?・・・動ける車があるのなら、奴を追え!今逃したら今度はどこに雲隠れするか」
降谷が大声で電話口に叫ぶ。
テレビでは工藤優作に扮していた有希子が、壇上に上がりスピーチを始めていた。
来葉峠では。
せっかく振り切った相手の所に赤井達は戻り、ひとまず公安の刑事達の無事を確認していた。
「悪く思わんでくれよ・・・仕掛けてきたのはあんたらの方だし・・・ああでもしなければ死人が出かねぬ勢いだったからな・・・そこで提案だが、今、あんたが持っている携帯と、さっき発砲したこの拳銃、交換してはくれないか?」
拳銃とスマホを交換し、赤井はそれを耳に当てる。そのスマホは降谷と通話中のままだ。