第6章 気付けば彼のことばかり
「今日はどうしたんだ・・・」
優しく頭を撫でてくれる大きな手。
涙を堪えながら彼を見つめると、とても、辛そうな顔をさせてしまっている。
「わたし、赤井さんがいいんです・・・」
「沖矢が嫌なのか?」
ううん、と首を横に振ったが、彼は既に変装を解き始めている。
やがて現れる、本来の姿。
わたしの大好きな人。そう、この人が、好き。
「すき、赤井さんが、好きなの・・・」
また涙が頬を伝う。
泣きながら愛の告白をしてしまった。
しかも涙でぐじゃぐじゃになった、酷い顔で。
「かおり・・・」
わたしの肩に手を置いて、真っ直ぐに見つめられる。
「参ったな・・・」
困ったような顔の彼に、胸が締め付けられる。
「これは組織を潰すまでは言うまいと、決めてたんだが」
・・・何も言えずにただ次の言葉を待つ。
「俺も、かおりが好きだ、愛してる」
・・・時間が止まったかと思った。
何を言われているのか瞬時に理解できなくて。
唇が近付き、重なる。
甘くて、蕩けるようなキスを、何度も何度も、ずっと繰り返す。
唇が離れると、その口から呟かれる言葉が嬉しくて、また重ね合わせずにはいられなくなる。
好きだ、とか、名前を沢山呼ばれたり、愛してる、とか。
愛している人とするキスは、こんなに気持ちいいのか。
いつの間にか涙は乾いていた。
代わりに唇がジンジンと痺れている。
でもまだ離れたくない。このままこうしていたい。
触れ合う唇、抱きしめてくれている力強い腕に、甘い声・・・身体中に赤井さんの気持ちが伝わってくる。
・・・わたしの気持ちも、ちゃんと伝わってるだろうか。