第6章 気付けば彼のことばかり
安室さんを見送り、大きく息を吸い込み、吐き出す。
どうも彼と会った後は、赤井さんに顔を合わせづらい。
もう一度深呼吸をして、玄関の扉を開いた。
「ただいまー!沖矢さん!」
「おや、早かったですね」
いつもの流れで盗聴器を確認する。
最近思う、これ意味あるのか?一度も仕掛けられたことないけど。
でも念には念を入れなければならない相手だ、と声だけが赤井さんに戻った彼に言われ、またいつもの流れでリビングへ。
「今日も来ました、降谷零」
「いくらなんでも頻繁過ぎないか?お前本気で気に入られたんじゃないのか」
「じゃあ、作戦成功ってこと?」
「そうかもしれんが・・・お前はどうしたいんだ。かおりは奴の事、どう思ってる?真面目に聞いている。正直に言え」
空気がピリッと、張り詰めたような気がした。
グルグルといろんな意見が頭を飛び交う・・・
まさか赤井さんは、わたしが降谷零の事を好きだと思ってる?とか?
降谷零はともかく、安室透という人物を嫌いになれないのは事実だが。
そんな考えは、戒めなければならない。
赤井さん達と組織を追い、潰すことが今わたしが最もすべき事だ。
「彼は、組織を壊滅に向かわせる為に、今のわたしにできる唯一の手段です」
「それは本心だな」
顔を近付けられ、目をジッと覗き込まれる。
「はい」
でも、わたしが好きなのは、目の前のあなたなのに。
その彼に他の男が好きなんじゃないかと思われてる?
どうしてかな、涙が滲んできた。
「おい、泣くな、どうした」
泣くなと言われると余計に涙は溢れるから不思議だ。
「なんでも、ないです・・・っ」
「何もない訳無いだろう」
抱きしめられて背中を優しく撫でられる。
「すみませんっ・・・ありがとうございます」
彼はそれ以上何も言わずに、わたしが泣き止むまで身体を撫でてくれていた。
段々と気分も落ち着いてきて。
わたしの居場所は、ここで、この人の近くにいたいんだと、強く思う。
「言いたくないなら言わなくていい。でも俺はいつも、お前のことを一番に考えているから。お前が辛そうだと、俺も辛い」
「赤井さん・・・」
わたしの事を一番に考えてるって、どういう事?
赤井さんはわたしの事、どう思ってるの?
どうしよう、また涙が滲む。