第6章 気付けば彼のことばかり
翌日、早朝からホテルの入口近くで対象者を待った。
寒いと言えば安室さんが手を握って温めてくれて。身体を寄せ合ってしばらく過ごした。
朝なので人通りこそ少なかったが、赤井さんはどこかでまた見てるんだろうか。
だいぶ時間が経ってようやく対象者が昨日と同じ女性と出てきた所を写真に収め、また後をつけた。
けど、その辺の話は割愛する。
調査は終了し、安室さんに事務所まで送ってもらう。
事務所のビルの真ん前に車が止まり、昨日からの諸々のお礼を言おうとしていた時だった。
「かおりさん、エラリーで何か起こっているかもしれません・・・様子見てきます。一緒に来ます?」
「はい!」
たしかにザワついているように見える店内。わたし達は足早に店内へ向かった。
「・・・ママ!!」
そこでは、エラリーのママが床に倒れており、周りで客達がオロオロしていて。
「ママ!僕です!安室です!分かりますか!」
すぐさま駆け寄った安室さんが声を掛けるがママから返事はない。呼吸はしているが、意識は朦朧としているようで。
「救急車は呼びましたか!」
「あ、あと五分程で来れるみたいです!」
「かおりさん!毛布か布団か、持ってこれますか」
「はい!」
二階へ駆け上がり、勝手ながら宗介さんの毛布を手にして急いで持ってきた。
その上にママを横向きに寝かせて玄関近くまで運ぶ。
客達を帰らせ、救急車が到着し、彼が容態を説明する。
わたしが救急車に同乗し、安室さんは車で後を追いかける事に。
サイレンを鳴らし走る救急車はすぐに病院に着き、ママは処置室へ運ばれ、わたしは廊下で待つ。
すぐに安室さんもやって来て、隣に腰を降ろした。
「ママ、前に言ってたんですよね、最近調子悪いって。病院勧めればよかった」
「かおりさんのせいじゃありません。すぐに病院に運べましたし、きっと大丈夫です」
「安室さんってすごいですよね・・・あんな状況でもテキパキ動けて」
「僕だって焦りましたよ」
「でも救急隊員の人も褒めてました」
「僕は、そういう現場に人よりも慣れていただけです」
そこにエラリーのママの旦那さんである、ポアロのマスターもやってきて。
ママの処置も終わり、医師からは、しばらく入院して安定するまで様子を見ると告げられた。