第5章 お兄さんには内緒で
達した脱力感もあって動けないでいるわたしを、安室さんはやさしく拭いてくれる。
挿れたまま、しかも相手と達する瞬間に噴いたのは本当に初めてだった。
そんなに彼が上手なのか、それとも相性の問題なのか。
分からなくて、この男が余計に恐ろしい。
隣に戻ってきた彼に、それはそれは甘くて素敵なピロートークを暫く繰り広げられ・・・その流れで問われる。
「かおりさん、沖矢さんとは、本当にただの同居人なんですか?」
「そう、ですけど、どうして?」
心臓がまた別の意味でドキッと動き出す。
「僕だったら、こんなに素敵な女性が家に居たら我慢できません」
「もーやめてくださいって」
「ちなみに彼とお風呂に入ったことは?」
「ある訳ないじゃないですか!」
「すみません、怒らせるつもりは無かったんですが・・・警察関係者の仮の姿って言うのに、興味がわきまして」
「そんな感じ、全然しないんですけどね・・・」
やっぱり沖矢さんのこと怪しんでる。
「ねえ安室さん、警察の人が身分を隠すって、何の為にしてるんでしょう」
「・・・潜入調査中が一般的ですかね」
「じゃあ沖矢さんは、一体どこに潜入してるんでしょうか」
「それは僕にも分かりませんよ。ニッポンの警察は、優秀ですから」
風呂を促され、ひとりで入った。
一緒に入ったっておかしくない雰囲気なのに入らないのは、わたしの荷物を調べたいからか。
わたしに知られたくない誰かに連絡でも取りたいからか。
わたしは上手く沖矢さんの事を誤魔化せているだろうか。
秘部を洗おうと手を伸ばすと、まだ乾いていない蜜がトロトロと残っていて、情けなくなる。
不本意ながらも彼の抱き方は、好きだった。
こんな形で出会ってさえなければ、きっとまた抱かれたいと願ってしまうと思う。
でも赤井さんと出会ってなかったら、そもそもこんなことにもなってなかったのか。
その日は誰にも言えない複雑な気分を抱えて、安室さんの横で眠った。