第5章 お兄さんには内緒で
いい天気、過ごしやすい気温、心地良い風。良くも悪くも絶好のデート日和・・・
安室さんの車で調査に向かう。
まずは依頼人、対象者の家の玄関先が見える場所で待機だ。
「結構いいお宅ですね」
「対象者は大手電機メーカーの役員だそうです」
「成程・・・おっ、出てきますね」
「対象者です。安室さん、お願いします」
その男性は、車に乗り出ていく。写真を撮り、後を追う。
わたしと安室さんは、デート中の恋人同士を装いながら、その人物を夜まで追い続けた。
そして対象者らが訪れたホテルのラウンジにて、今日の尾行の結果をまとめる作業に取り掛かる。
・男性は新宿駅近くの広場で女性と待ち合わせしており、その女性を車に乗せ、台場方面へ向かう。
・某ショッピングモールの駐車場に車を置き、女性の買い物に付き合う。
・徒歩移動でレストランへ。夜のレインボーブリッジを眺めながら二人でイタリアン。
・再び徒歩で移動し、二人でシティホテルに入る。チェックインを済ませて二人で同じ部屋へ。一時間以上様子を伺ったが、部屋からは出て来ず。
・明日ゴルフに行くには普通に考えれば早朝にここを出なければならない筈だが、車を置いてある駐車場は夜間~早朝は閉まっており、朝は8時半からしか出庫はできない。つまりゴルフには行かないと思われる。
以上だ。
「典型的なお台場デートでしたね」
「ですね・・・調査じゃなかったらなぁ。普通に楽しみたかった」
「僕もです。せっかくかおりさんが隣にいるのに」
「ねえ安室さん、手伝って頂いたお礼に何かご馳走させてください!どっか行きましょう!」
遠出になると思っていた調査は、案外近場で済んだ。
明日は早朝からホテル前でまた張り込むつもりだけど、これなら一度家に帰ることも可能だ。
安室さんはどうするつもりなのか。
赤井さんは、今も何処かから見ているんだろう。
でも全く気配を感じないのは、さすがFBI・・・といったところか。