第4章 標的は降谷零
久しぶりに岡田探偵事務所に仕事が来た。
主婦からの依頼で、旦那がいつもゴルフに行くと言い、前日から泊まりがけで家を出るそうなんだが、どうも怪しいそうで。所謂浮気調査だ。
少々遠いのが難点だけど、依頼自体は簡単そうなので引き受けた。
レンタカー予約して、泊まれる準備をしなくては。
依頼者が帰ってすぐ、事務所の扉がノックされる。
もう片付けて帰ろうと思ってたのに。今日は珍しくお客が来る日だ。
「はーい!」
「こんばんは、かおりさん」
降谷零だった。
「安室さん!どうしたんですか?」
「かおりさんに会いに来た、ではいけませんか?」
「嬉しいです。どうぞー。座ってください」
「ポアロで明日から出す新作のケーキを持ってきました。よかったら今夜食べてください」
「うわー!ありがとうございます!」
二人分、コーヒーを入れていると、「浮気調査ですか?」と降谷零の声がして・・・
机の上に出しっぱなしだった書類を見られたようだ。
「ええ、そうです。見たこと内緒にしてくださいよ?」
「依頼人の秘密は厳守ですよね。僕も探偵ですから。大丈夫ですよ」
ニコニコしながら書類に目を通す安室さん。
「これ泊まりがけですね」
「そうなんですよー。わたし車は無いし、土地勘も無いし、でもお金もないから受けなきゃで」
「僕と一緒に行きます?」
「・・・本気で言ってます?」
「ええ。簡単そうな依頼ですし、デートも兼ねて」
「・・・楽しそうですね」
「お兄さんには内緒ですよ」
「ますます楽しそうですね」
降谷零と、泊まりがけで出かけることが決まった。
楽しみなフリはするけど、胸中は複雑で・・・
赤井さんに言ったら、喜ぶか、拗ねるか。どっちだろう。
安室さんに家まで車で送ってもらう。
「いつもありがとうございます、ケーキも、それに家まで送ってくれて・・・」
「僕がしたくてしてるだけですから。では、土曜日三時に事務所へ迎えに行きますね」
「はい。お願いします」
帰り際にまたキスをされた。
安室さんの唇、柔らかくて気持ちいい・・・と、頭で理解ができるくらい、長い口付けだった。
前回よりも長く触れ合った唇は、離れた後もなんだか熱を持っているような気がして。
その熱が冷めたように感じるまで家に入れなかった。