第4章 標的は降谷零
俺にキスをし、こちらを見つめてくるかおり。キスを返してやると、幸せそうに笑う。
瞳はトロンとしているが・・・これは眠気からきているものだろう。
やはりそうだ。数秒後、目は閉じられ寝息が聞こえてきた。
今日はバーボンと出掛けて、気を張り続けて疲れたんだろう。
俺はあまり自分のことを人にペラペラ話すタイプではない。それにそもそも人前で弱気になっている所なんてまず見せない。
でも目の前のこの女に、俺は何でも話すし、ありのままの自分で接している、と気付く。
秀吉が棋士だという話を、家族以外の者としたのは初めてだ。
それほど俺は彼女に気を許しているんだろう。
恋愛なんて当分御免だと思っていた。大事なものを作れば、それが俺の弱みになるだけだ。
でも彼女の存在は、俺の中で日ごとに大きくなっており、もはや欠かせないものになりつつある。
バーボンがかおりに接触してきたのに気付いたときは、無理矢理手を引いて連れて帰ろうかと思ったが、留まった。
今日だってそうだ。本心では、かおりにあんなことをさせたくはない。
彼女はバーボンと関係を持つことは嫌じゃないのか。彼と居て楽しそうなのは本当に演技なのか。
まあ恋人でもない俺がそんな事を言ってもおかしな話だし、この計画はこのまま遂行させたい所なんだが・・・
複雑な思いが頭を過ぎっては消え、また過ぎた。