第4章 標的は降谷零
動画のデータを赤井さんのボスに送り、調べてもらう。
「随分楽しそうだったな。まるでデートだ」
「楽しそうに見えてたんなら良かったです・・・全然楽しくなんて無かったですよ。あのイケメンのせいで女子からの視線が痛くて痛くて・・・」
「安室さんってそんなにすごいんだね」
「最後、車を降りる前、何を話していた?聞き取れなかったが」
「ああ、沖矢さんがうるさいから、今度は沖矢さんに内緒で会いたいなって言ったんです。そしたら今度は内緒で遠くへ出掛けましょうって、キスされて」
「わざと俺に聞こえないように言ったのか?・・・とんでもない女だな」
「演技です」
「本当か?」
「あのボク・・・今日はそろそろ帰るね。あのスーツの人の事分かったら教えて!」
外が暗くなり、カーテンを閉めて。沖矢昴の変装は解かれ、彼は赤井秀一に戻る。
「沖矢は心配性の兄の設定なのか?」
「そんな感じです。ダメでした?」
「構わんが・・・少し傷付いたな」
「嘘?うれしい・・・赤井さんが」
「俺じゃない。沖矢がだ」
「一緒じゃないですか。もしかしてわたしが降谷零と仲良くするのは、嫌?」
「知らん。勝手にしろ」
部屋を出ていく赤井さんの背中を見ながら、しばらくニヤニヤが止まらない。
でも、これからどうやって降谷零と接していこうか。
向こうはこちらに気がある素振りを見せてきた。このままいけば、やっぱりそのうち男女の関係になるんだろうか。
どのタイミングで、何を聞けば、彼の真実の正体が分かるのか。
「おい」
「はいっ!・・・ビックリしたー」
知らない間に赤井さんが部屋に戻ってきていた。
「かおり、あのスーツの男は公安の刑事だった」
「ということは、降谷零の仲間?」
「まだ確証はないが、その可能性が高い。今、男の口元の動きを解析して、電話で何と喋っていたのか調べてもらっている所だ」
「やりましたねっ!わたし!」
「喜ぶのは結果が出てからにしろ」
「はーい・・・」
解析の結果は、
あかいのおんながきました、
はい、
ふるやさんは、
すみません、
たいきします、
はい、
だった。
「喜んで、いいですよね?」
「いいんじゃないか」
両手を上げて喜ぶわたしの頭を、赤井さんは微笑みながら撫でてくれた。