第4章 標的は降谷零
「僕もトイレに行ってきますね。スグ戻りますから、このまま待っててください」
食後にコーヒーを飲んでいると、彼は席を立ち、店を出ていった。
先程のスーツの男性と会ってるんじゃないのか?
気になるがどうにも今はできることがない。
その後戻ってきた彼と、少しだけショッピングモールの中を楽しんで、また車で米花町へ送ってもらう。
「近くでいいです」と言ったが「家まで送ります」と言って聞かない彼に工藤邸まで案内させられる。
絶対家の場所、知ってるくせに・・・
「今日はありがとうございました。お昼までご馳走になって」
「いいんです。僕がかおりさんに会いたかっただけなんで」
「安室さんがいてくれて良かったです・・・こんな話、他に話せる人いないし」
「なんでも言ってください。あなたの力になりたいんです」
工藤邸の前で停車したまま喋っていると、沖矢さんが玄関から出てくるのが見えた。
わざと運転席の方に身を乗り出して安室さんの耳元で囁く。
「じゃあ、今度は沖矢さんには内緒で会いたいな・・・あの人いろいろうるさくって」
「では今度は内緒でもっと遠くに出掛けましょうか」
そう言われた直後、ほんの一瞬、唇が触れ合った。
驚いて、目を見開く。半分は演技だが、本当に驚いた。
「ほら、お兄さんがお待ちですよ」
「はい。じゃあ、また」
ぎこちなさそうに車を降りて、笑顔で安室さんを見送った。
「お帰りなさい、かおりさん」
「ただいまー」
沖矢さんの顔が耳元に近付き、小声で言われる。
「盗聴器が仕掛けられてないか調べるまで喋らないでください」
わたしが今身を置いているのは、そんな状況なのだと実感する・・・
服も持ち物にも、何も仕掛けられていないことを確認して、ホッと一息つく。
「お疲れさまーかおりさん」
家の中では、コナンくんがコーヒーを入れてくれていた。
「ありがと!あの、すぐ確認してほしい動画があります」
「なんだ?」
「これ・・・このスーツの人、降谷零の知り合いかもしれません」
「組織の奴ではなさそうだな。彼と接触したのか?」
「いえ、降谷零がこの人を目で確認してたから気になって」
「かおりさんすごいね!」
「わたしだって一応探偵なんだから!でも収穫はこれだけかな」