第30章 後始末とこれから
翌朝。ベッドでウトウトしていると、いきなりスマホの着信音が鳴り出した。
こんな朝早く誰・・・と画面を見ればエラリーのママで。とりあえず出る。
「もしもし、おはようございます」
「かおりちゃん!まだ寝てた?」
朝から興奮気味のママの声が二日酔い気味の頭に響く。
「はい・・・すみません、どうしたんです?朝から」
「あのねぇ、落ち着いて、聞いてね・・・」
「はい・・・」
「安室くんがねぇ・・・亡くなったの」
「は・・・っえ?」
安室透が死んだ?
一気に寝起きの脳ミソが冴えてくる。眠気も二日酔いも何処へやら、目もぱっちり開いて、ベッドから勢いよく飛び起きた。
「昨日、タクシーで帰ってる途中に事故に遭ったらしいのよぉ・・・」
タクシーの後部座席で死亡した彼は、身元の分かるものを所持しておらず、幸い無事だったタクシーの運転手の“米花町の居酒屋(わたし達が昨日いた店)から乗せた客だった”という証言を頼りに身元の捜索が行われたそうで。
その居酒屋の主人から“エラリーの従業員でないか”と証言が取れ、ママの所に警察が来て遺体の確認に連れ出され、彼の死を確認し、今に至るそうだ。
ママが言っている事の意味は分かるものの、自分の知ってる人間が死んだとは、即座に理解し難い。だって信じられない。
「安室くんのご家族って、知らないわよねぇ・・・」
「家族はいないって聞いてます・・・」
「親しいお友達とか、知らないかしら・・・」
遺体の引き取り手はどうするのか、そういう類の話になり。でもわたしも、どうしたらいいか分からない。
一度電話を切り、深呼吸して考えてみる。
キッチンへ水を飲みに行くと、昨日零にもらった花束が流しで水に浸けられているのが目に入る。酔って帰ってきて、とりあえずそうしておいたのだ。
その花の中に、小さな封筒が付いているのが見えて。
手に取り開封すると、中には可愛らしい雰囲気のメッセージカード。それは多分、安室透からと思われる手紙だった。
かおりさんへ
短い間だったけどお疲れ様!
今まで本当にありがとう。
新しい場所でもかおりさんなら
きっとうまくやっていけるよ。
あなたらしく頑張ってください。
まあ、至って普通、当たり障りのない内容だ。