第30章 後始末とこれから
翌日、秀一さん達がアメリカに立ち、夜になり。
エラリーの常連に人気の居酒屋でわたしの送別会が始まった。(以前昴さんとも来たことがある店だ)
安室透は不在。
変わらずメニューに表記されていた“からすみ”の文字を見て、なんであの時は“からすま”と読めなかったんだろう・・・と一人頭の中でボヤきながらも、皆と会を楽しんだ。
その会もそろそろ終盤。
皆いい具合にお酒も入り丁度いいくらいに酔ってきて(梓さんは酔っ払ってるけど)。そろそろわたしから皆にこれまでのお礼を述べなければ、とタイミングを考えていた時だった。
店の玄関の扉が開き、安室透が入ってきた。
「遅くなりました!間に合ったみたいですね!」と彼はわたし達のいるテーブルに駆け寄ってきて。
その彼の手には大きな花束。白色と黄色をベースにした可愛い花が沢山・・・
「お仕事、お疲れ様でした」と花束を手渡され。急な事にビックリしてしまい、すぐには言葉が出てず・・・代わりに涙が溢れそうになってきた。
泣きそうになりながら、皆にお世話になった事への礼を述べる。梓さんがわたし以上にボロボロ泣き出すからもう参ってしまった。
そして会はお開きになり。
皆で居酒屋から出ると、安室透は「仕事が立て込んでて」と、我先にタクシーをつかまえ、一人それに乗り込み帰って行った。
ママ・マスター夫妻と梓さんもタクシーに乗って帰り、わたしは宗介さんと二人で二次会へ。
酔いも相まって、宗介さんには今まで本当にお世話になりました、とお礼を何度も繰り返し、日付が変わる頃に帰宅した。
わたしは、秀一さんが日本でやりたい事が終わるまでの間はしばらくこっちに居る予定だけど、事務所やエラリーにはもう出勤はしない。
明日からはゆっくり引越しの準備を始める予定だ。
誰もいない寝室、広いベッドのど真ん中に寝転び、今までの事、これからの事、色々に思いを巡らせながら眠りについた。