第30章 後始末とこれから
積もる話があり過ぎる。そのまま宗介さんと話し込んでいると、零から着信があった。
事務所に宗介さんと居ることを告げると「今から行ってもいいか」と聞かれ。
昨日帰り際に言ってた件だろう。断る理由も無いので来てもらうことになり。
すぐにやって来た彼に、わたしが先日この事務所前で安室透に扮したベルモットに連れ去られ、監禁された時の詳細を話すと、あっという間に彼は帰って行った。
宗介さんもいる手前そうだったのかもしれないし、零だって忙しいんだろうけど・・・あまりのスピード聴取に(しかもほぼ、それのみ)呆気に取られてしまった。
再び宗介さんと二人になった事務所内。思いもよらぬ事を聞かれる。
「葵・・・一つ聞いていいか。まさかお前、安室透とは何も無いよな」
「・・・何かおかしかったですか」
「ああ、まあ・・・そう見えた」
たった数分の事だったのに。
わたしと安室透は、“関係があるのを、無いように装ってる”ように見えたらしく。
・・・宗介さんには嘘をつく必要も無い。
今までのわたしと安室透、つまり降谷零との間にあった色々も洗いざらい話した。
宗介さんは、怒りもせず、話を聞いてはくれたけど、良く思われていないのは顔付きから痛い程伝わってきた。
「でも、もう、彼とは・・・極力会わないようにするつもりです」
「沖矢くんの為にもその方がいい」
「ですよね・・・安室透はそのうち米花町からいなくなるでしょうし、それと・・・少し言いづらいんですけど・・・」
「どうした」
「しばらくしたら、沖矢さんというか・・・彼と一緒に、わたしもアメリカで暮らす事を今考えてます。だから、そのときは・・・ここを、退職してもいいでしょうか・・・」
「構わんよ。彼の正体を聞いた時からいずれそうなる事は考えてた」
「宗介さん・・・」
気付けば涙が込み上げてきていて。
ティッシュ箱を引っ掴んで紙を引き出し目元にあてる。
宗介さんに宥められ、落ち着きを取り戻して。
二人で階下のエラリーへ顔を出しに行った。
宗介さんは“厄介な難事件に関わってしまって、しばらく帰って来れなかった”とママに嘘をつき。
わたしは“昴さんがアメリカの大学に拠点を移して研究を進める事になったから、自分もアメリカへついて行く”と嘘をついた。