第30章 後始末とこれから
久しぶりに秀一さんと二人で帰ってきた自宅は、酷く居心地が良い。こんなにほわんとした気分になったのは何時ぶりか・・・
「俺がどうしてFBIに入ったのか・・・まだ話していなかったな」
「はい・・・聞いた事なかったです」
ソファに二人列んで座り、秀一さんがゆっくりと話し出した。
秀一さんのお父さんは、所謂国の諜報機関に勤めていて、十数年前、アメリカで起きた事件の調査に関わり、突然姿を消したんだそう・・・表向き死んだことになってるそうだけど。
姿を消す原因となった思われるのが、あの“組織”で。
秀一さんは父親の失踪の真相を探る為、学生時代にアメリカへ留学、そのままグリーンカードを取得、アメリカ国籍を取りFBIに入局し、組織の捜査にあたっていたらしい。
でも何年調べても父親には辿り着かず。だけど死んだという確証も出て来なかった。
赤井秀一が沖矢昴として生活していたように、父も何処かでひっそり暮らしているのでは、と考えていたそうなんだけど。
今日ついに、ラム、ジン、ベルモットを捕らえた。組織の解体は、もう近いと思われる・・・つまり、父親とも会えるのでは、と秀一さんは期待しているみたいで。
「あとは父さんの行方さえ分かれば・・・俺の当初の目的は果たされ、FBIにいる理由は無くなる」
「それは・・・FBIを辞めるってことですか?」
「・・・正直、迷っている」
「秀一さんでも迷うことあるんですね・・・」
「迷っているのはかおりがいるからだぞ」
「・・・そう、ですか」
「十年近く働いてみて・・・良い仲間にも巡り会えた。俺はこの職にやり甲斐も感じているし、自分に向いているとも思う。俺一人なら続けたい。だが働き続ければまた危険な相手と対峙する事もあるだろう・・・それにお前が巻き込まれない保証はどこにもない」
「わたしは、秀一さんと一緒なら・・・」
「そんな事は分かっているし、俺だってお前と離れる気は無い。要は、職を捨てて安全な所でかおりとのんびり暮らすか否かだ・・・父さんが俺達家族を遠ざけた理由が今ならよく理解出来る・・・」
“俺一人なら続けたい”って?それなら続ければいいじゃないか。わたしの事を思ってくれるのは有難いけど、それが秀一さんの本当にやりたい事の妨げになるのなら・・・そんな状態で心から楽しく過ごせる訳がない。