第29章 捕われた子猫
部屋を出ると、遠くにこちらに向かって手を上げているキャメルさんがいて。
ってことはやっぱりさっきのは秀一さんなのか?チラりと後ろを振り返り、キャメルさんの方へひた走る。
キャメルさんはエレベーターの扉を開けっ放しにしたまま待っていてくれていたようで。
その箱の中へ駆け込み、壁にもたれかかり肩で大きく息をする。ダッシュなんてしたのは久しぶりだ・・・
すぐにエレベーターは階下へと動き出した。
息一つ乱れてない零は、キャメルさんと話し出す。
「さっきのホテルマンもFBIか」
「ええ。ベルモットとジンを麻酔で眠らせに・・・ちゃんと身柄確保は公安にしてもらう予定ですよ」
「そうか・・・あのビルには何があった?ここに君達が乗り込んできたということは、とんでもない物が見つかったのか?」
「・・・恐ろしい話ですよ・・・私もまだ触りしか聞いていませんので詳しい事はまた後で聞いてください・・・」
程なくして、エレベーターはフロントのある階に着く。
「・・・かおりさんはFBIが送ってくれるのか?」
「そのつもりですが」
「絶対に無事に送り届けてくれるか」
「勿論です」
「じゃあかおりさんを頼む。かおりさん・・・ああ全く・・・話したい事だらけなんだけどな・・・落ち着いたら連絡するから、またな」
零はわたしの頭を撫でながら言うと、何処かへ走っていった。
わたしはキャメルさんと別のエレベーターに乗り地下に降り、車に乗せられた。
すぐにエンジンがかかり、車が動き出す。
「さっき部屋に入ってきたホテルマンって、秀一さんですよね?」
「そうです」
「待たないの?」
「待つなと言われています。それよりもかおりさんを病院に連れて行けと言われているので・・・」
「病院?わたしどこも怪我してませんよ?大丈夫です」
「ですが・・・拉致される時に眠らされたりしたでしょう?念の為です、検査を受けてください。赤井さんも終わったら来る筈です」
「えー・・・」
「そうしないと赤井さんに怒られますから」
「・・・ジンもベルモットも捕まえられたんですか?」
「おそらく」
「わたしがいない間に何があったの?」
「まだ全てが解明された訳ではないので私の口からはなんとも・・・」
一体何がどうなってこうなったのか。