第3章 本当のあなたは
安室透は、警察の人間として組織に潜入しているのか、それとも組織の人間として警察に潜入しているのか。
そして、赤井さんを見つけたら、組織に連れていくのか否か。
彼の本性が警察の人間であり、かつ赤井さんを組織に連れていかないのなら、コナンくんの作戦が使えそうなのだ。
わたしにも、彼と接触してそこを見極めてほしいと言われるが、そんなこと・・・できるのか。
「わたしは安室さんに流されてるフリをしつつ、逆にこっちの流れに乗せればいいんだよね?」
「ああ。まずは自分を信用させることからだが、最終的に彼がお前に惚れる所まで持っていけたらベストだな・・・おっ、ボスから電話だ」
赤井さんが通話する様子を、無言でコナンくんと見つめる。横顔もカッコイイだなんて場違いな考えも浮かんでくる。
「安室透の正体が分かった、彼の本名は、降谷零、所属は警察庁警備局警備企画課・・・所謂ゼロだな、年齢は29。ボウヤ、お手柄だったな」
「えへへ。ゼロなんてあだ名珍しいもんね」
「29歳?もっと若いと思ってた・・・わたしにできると思いますか?」
「訓練するか?俺が安室透に変装してやろうか」
「い、いえ、普通でいいです・・・もうただでさえ頭パンクしそうなんで」
昼頃になって、安室さんこと降谷零からの着信があった。赤井さんとコナンくんに凝視されながら通話する。
「かおりさんが心配で、報告がてら事務所まで様子を見に来たんですが、今日はお休みですか?」
「来てもらったのにすみません・・・昨日考え事してたら朝まで眠れなくて・・・宗介さんもいないし今日は休んじゃおうかと」
「僕でよければ相談に乗りますよ。迎えに行きますし、ランチでも行きませんか?」
「ありがとうございます・・・なんか誘われたらお腹空いてきちゃいました。行こうかな」
近所まで迎えに来てもらい、お昼を食べる約束をした。
「早速だな。かおり、盗聴器付けるぞ」
「え!まあ、そうなりますよね・・・」
「距離は置くが、俺もボウヤと跡を追う」
「わたし着替えてきますね」
男性が好みそうなひらひらしたスカートに、下品でない程度に胸元の開いたブラウスを着る。
昨日のキスマークはちゃんと隠れているのを確認して、リビングに戻る。
袖の内側にシール型の発信機付盗聴器を付けられ、家を出た。