第29章 捕われた子猫
零に電話をかけてしばらく経ち。
突然室内にチャイムの音が鳴り響いた。
ベルモットがベッドから下り、胸元から拳銃を取り出しながら入口へと向かう。
彼女は少しだけドアを開けて、零らしき人物とブツブツ喋っている。
「何をしている、早く入れ」
「バーボン、入りなさい」
扉が開かれ、ベルモットに銃を向けられ両手を上げた状態で零が部屋に入ってきた。
「かおりさん・・・無事でよかった・・・ケガはありませんか」
「・・・大丈夫、です」
「お前の返答次第ではこの女もお前も怪我所じゃ済まなくなるがな」
「・・・一体どういう事なのか説明してくれ」
バーボンは単独行動の多い秘密主義者で、ジンには元々好かれていなかったんだそう。
それは別にいいとして。
最近バーボンの車があのバーの周りを走っているのをジンは見かけたそうだ。それがどうも怪しいと感じ、バーボンと共に行動することも多いベルモットを問い詰めたそう。
ベルモットは“近くまでバーボンに車を運転させた事はある”と認めたが、“バーに入る所は絶対に見られていない”と言い張った。
あのバーにはごく限られた組織の人間以外誰も入れないよう店主にキツく言いつけてある為、店内に監視カメラは無い。でもそれでは甘過ぎたかもしれない。
ジンは店主にカメラ付きのボールペンを与え、それを胸ポケットに差して仕事するよう命じ、店を訪ねる客の顔の記録を始める事にした。それが昨日だったのだ。
昨日、ジンはバーから自宅へ戻り、記録された映像を確認した。すると早速自分達が来店中の時間に若い男女が店を訪ねてきている映像が確認できた。
ベルモットを呼び出し映像を確認させると、明らかにモニターに映る女性に彼女は反応を示したそうで。
「どこのどいつなのか吐かせてみれば、バーボン、お前と親しくしている女だそうじゃないか。お前が店の様子を覗いてくるよう仕向けたんだろ?」
「有り得ない、そんなことしていない」
「言い訳は見苦しいぞ」
「第一僕がかおりさんにそんな危ない事を頼む筈がない、ベルモットに聞いてみろよ、僕がどれだけ彼女の事を・・・」
「どうなんだ?ベルモット・・・」
「そうね・・・バーボンがその子をとっても大切にしてるのは間違いないわ。だからワザと危険な場所へ向かわせるなんて、たしかに考えにくいのよ・・・」