第29章 捕われた子猫
“安室透を呼び出せ”とジンに言われ、ベルモットがわたしのスマホを上着のポケットから取り出し、ロックを解除させられた。
どうするべきか短時間で悩みに悩んだ。
今頃みんなは・・・わたしがいなくなった事に気付いてるだろうか。そしてそれは組織の人間に拉致されたからだと気付いてくれているんだろうか・・・
そうなら零に電話をかけても大丈夫か?でも今零は、張り込みを終えて寝ている時間だ。知らないかもしれない・・・
結局わたしの意志とは関係なく、電話帳から安室透を探され、発信されてしまうのだけれど。
スマホを耳元に当てられ数秒後、零がいたって普通のトーンで電話に出てくれた事に物凄くホッとして・・・
(寝起きでも無さそうだし、驚いている風でもなく、本当にいつもの感じ)
でもすぐにスマホはベルモットの元へ。
先程わたしが言われた事と、ベルモットが電話口に話す事から推測するに・・・零は、組織もしくはジン達の秘密を暴く為、あのバーへわたしを仕向けたと思われてるみたいだった。
つまり、バーボンは組織の裏切り者だと思われてるのか?
“疑わしきは罰する”・・・秀一さんや零から、あの組織はそういう所だと聞いた記憶が蘇ってくる。
零がヒロと呼んでいた、スコッチ、彼の最期の事も・・・
通話は終わったようで、ベルモットはわたしのスマホを彼女が着ている上着のポケットへと戻した。
彼らはベッドに腰掛け、それぞれ煙草に火を付けた。狭い部屋に煙が充満していく。
零は今からこちらに来るのか?
来たら零はどうなる?
今度は自分の事よりそっちが気になって仕方ない。
零はここに来てこの状況をどうするのか。
でも、でも、零なら、秀一さんだってそうだ、優作さんもコナンくんだって・・・彼らは、何の勝算も無しにこんな所には現れない・・・はず。
いやでも・・・零はいざとなったら自分の命より人の命を優先して突っ込むタイプだ・・・ほんと真面目が過ぎる。そんな考えが一瞬過ぎったりして。フッと微笑みそうになるのを堪える。
そうなる事で気付いた。わたし自身、少しこの状況に慣れてきたかもしれない。
もっと冷静に周りを見なければ。
“慎重かつ大胆に”・・・昔宗介さんから潜入調査の時に教わったセリフが頭の中で響く。