第29章 捕われた子猫
かおりがホテルの一室で目覚めた頃、降谷と風見は彼女を攫った車を特定し、その車の行方を映像上で追い、現在彼女が捕らわれていると思われるホテルを突き止めた。
風見は急いで工藤邸へ向かい、それを優作達へ報告すると、今し方見つけたホテルまでまた車を走らせ、そのまま見張りを開始する。
降谷は警察庁に一人残ってあのバーの入るビルの工事に関わった業者の資料を漁り出した。
不可解と言っては失礼なのかもしれないが、あのビルは小さな只の雑居ビル、なのにだ、建設に主に関わったのは国内最大クラスの建設業者(所謂スーパーゼネコン)のようで。
こんな小さな仕事を請負ったのか?と思えば思う程・・・建設段階から組織が関わっていたのでは、と妙な臭いがしてたまらない。
隠し部屋所じゃなくもっと凄いものがあのビルには隠れているのかもしれない。
降谷がそんな事を考えていた頃だった。
ジンとベルモットからバーボン用の番号に何度か着信があった。
しかしここは警察庁内、今は彼らの電話に出る訳にはいかない。
かおりさんを攫ったのはベルモットだとばかり考えていたが・・・ジンも一緒なのか。
ベルモット一人ならかおりさんを殺しまではしないだろうとタカをくくっていたものの、もしジンが一緒なのなら・・・命も危ない。
しかし逆に考えればこれはチャンスかもしれない。
降谷も警察庁を飛び出し、工藤邸へ向かった。
工藤邸にて、降谷が自身の考えを優作達に述べる。
「かおりさんを攫ったのはおそらくベルモットでしょう。でも今、ベルモットともう一人、ジンからも僕のスマホに着信が何度かきてるんです。無視していますが・・・かおりさんの事でしょうか」
「なんだと」
「ジン・・・」
「でも、見方を変えれば現在ジンとベルモットはおそらくかおりさんのいるホテルにいて、ラムは毛利探偵事務所の横で仕事中となります・・・」
「成程」
「組織のトップ二人の居場所が分かっている今なら、こちらは割と自由に動けるんじゃないでしょうか。僕の推測ですが、例のバーのある雑居ビルには何か秘密があると睨んでます」