第29章 捕われた子猫
エラリーを出て、今度は近所で聞き込みだ。
喫茶店の客でもあり、かおりと面識のある人物・・・まずは店の向かいの商店の店主に降谷が尋ねてみると、驚くことを言われる。
「こんにちは!あの、エラリーのかおりさん、今日は見てないですか?」
「安室の兄ちゃん・・・何言ってんだ?」
「何って、そのままの意味のつもりですが」
「つい今朝方のことも忘れたのかよ?らしくねぇなぁ」
「今朝・・・?」
「そこのかおりちゃんの事務所に上がる階段に朝一緒にいただろ?」
「僕と、かおりさんが、ですか?」
「他に誰がいるんだよ、大丈夫か?」
「そういえば・・・そうでした、忘れてました。ありがとうございました」
礼を言って通りに戻ると、後ろで黙って先程のやり取りを聞いていた沖矢が降谷に問う。
「今朝ここにいたのは、安室さんでは無いんですよね」
「ええ、僕はかおりさんとは優作さんのお宅の前で別れましたから」
「では誰なんでしょうか・・・」
「・・・そういう事をする奴に心当たりはあります・・・僕に化けた奴にかおりさんが攫われたと言えば、コナンくんも分かりますよ」
「はあ、そうなんですか」
「・・・すみませんが僕は僕のルートで探ってみます、昴さんは優作さん達の所に戻って今の事を伝えてください。それから・・・場合によっては今日の張り込みはできないかもしれません」
「はい。では何か分かったら連絡をください」
降谷は風見を電話で叩き起こし警察庁へ向かい、沖矢は工藤邸に戻る。
かおりはベルモットに連れ去られた可能性が高い、関係者の誰もがそう判断した。
現在時刻は午前十時、バーの前の張り込みは一旦中断し、かおりを探す事を最優先とする方針に変わる。
降谷と風見はエラリー周辺の防犯カメラの映像をひたすらにチェックする。
連れ去られた時間と場所は大体分かっているのだから、見つけるのは割と簡単な筈。
そうしてかおりが乗せられた車両が特定できたら、あとはその車の行方を追うだけだ。