第28章 烏羽色の尻尾
それから二時間程しか経っていない翌朝。アラームの機械的な音で目覚める。
身体が異様に重い・・・まだ起きたくない。これがいつもなら・・・もう少し、もう少し、と二度寝しそうになる所だけど・・・
工藤邸に行かなければならない。
怠い身体を無理矢理起こして秀一さんを探すと、彼は窓際の椅子に腰掛け、コーヒーカップを片手に相変わらず涼しそうな顔で外の様子を眺めていて。
何しててもこの人は絵になるな・・・なんてふと思う。
「おはよう、ございます」
「酷い顔だな・・・無理に起きなくてもいいぞ」
「うー・・・でも行かなきゃ・・・」
優作さん達と、電話ではできない意見交換をしてくるのがわたしの仕事なんだから。
それに、今日は一度事務所や家に帰って郵便物の確認もしてきたいし・・・
サッとシャワーを浴びて。
足取り重く工藤邸へ向かうと、コナンくんと零もいて。彼らの話を聞き、こちら側の意見も伝え。
工藤邸からの帰り際、零が「送る」と言ってくれたんだけど。それは断って一人自宅へ戻る。
自宅からはすぐに出て、今度は事務所へ向かって歩き出した。
するとなぜか事務所へ上がる階段の前に零が立っていて。でもなにか変な違和感を胸に抱きながら近付く。
「何してるの?こんな所で」
「かおりさんに会いたくて。ちょっとお時間いいですか?」
「・・・?事務所入る?」
「ええ、そうですね」
零に背を向け階段を登り始めた時に、違和感の正体に気付いた。
むしろなんでスグに気付けなかったんだろう。寝不足のせいで頭が働かなかったのか。わたしはバカか。
・・・零、さっきと着てた服が違う。
これは、まずい。
どうする・・・そう思った時には遅かった。
後ろから突然布で口元を覆われて、吸っちゃダメなヤツだと理解したのと同時に、わたしは気を失った。
それから約一時間後、かおりが戻ってこない、電話にも出ない、と赤井が優作に電話を掛ける。
かおりが工藤邸を出たのは一時間半以上前だ。
自宅と事務所に寄ったとしても、いい加減ホテルに着いている筈。
寄り道でもしているのか・・・でも電話に出ないのはおかしい。
彼女の突然の失踪に全員大慌てとなるのだった・・・