第28章 烏羽色の尻尾
バーと同じビルにある、位置的に真上の店にやってきた。
こちらは普通に入店できた。席に案内され、飲み物を頼んで店内を見渡す。
雰囲気は違えど、階下の店と同じ広さ、作りだと思われる。
人の姿が隠れるような場所は、やはり表側にはない。
用を足したい訳でもないけど、店内に一つだけあるトイレも確認する。ごくごく普通の広さで、ここにジンと脇田が二人で入っていたとは考えられない。
どういう事なのか。でもそれを大声で相談する事もできないので、さして関係無い話をしながら、少し速いペースでお酒を二杯ずつ飲み、店を出た。
ぼちぼちジョディさん達と零達の見張りの交代の時間。ホテルに戻り、何事も無いのを見守りながら、秀一さんと考えを巡らせる。
「あの店の裏に二人は居たってことですよね」
「裏に隠し部屋があるのかもしれんな」
「そんなスペースないんじゃないですか?キッチンだって狭そうだし」
「一見そうだが・・・当たり前が当たり前では無い事もある」
「そう、ですか?」
秀一さんに、「降谷くんに頼んで、あのビルの工事に関わった全ての業者を調べて情報をくれ」と言われ。
わたしはまた一人で工藤邸に向かった。
優作さん達に見てきた事とそれを報告し、ジン達は未だに店から出てきていない事も確認し。
またホテルに戻る。
秀一さんには「寝ろ」と言われたけど、いつジン達が出てくるか分からない状況では眠たくもならない・・・
眠れないまま夜中の三時になり、ようやくジン達が一人ずつ店から出てきて、それぞれ去っていったのを確認する。
(尾行はしないそう、してもおそらく無駄に終わるからだ)
ベッドの中で、バーの店主も店を閉めて帰っていったのをぼんやり聞きながら、やっと眠りについた。