第28章 烏羽色の尻尾
出歩く格好に着替えて、コナンくんには“わたしが向かう”と言ったものの、昴さんと二人でホテルを出て。
二人揃って工藤邸に顔を出すと、優作さんにもコナンくんにも、一瞬驚かれた表情をされる。
「どうしたんだい、二人揃って・・・まさかおかしな事でも考えているんじゃないだろうね」
「おそらくそのまさかでしょう」
わたしと沖矢昴でバーへ乗り込みたい旨を伝えると、やっぱり優作さんは怪訝そうな顔をする。
でもこんなチャンス、おそらく滅多にないのだ。
それに今ここで時間を食えば食う程、いざ乗り込んでもジン達は先に帰ってしまっていた、という羽目になる可能性も高くなる。
なんとか秀一さんが優作さんを説得し・・・
結局、盗聴器の類は無し、自分の目で見て、耳で聴いてくるだけ、長居はしない、という条件付きで承諾をもらった。
それから、秀一さんはピストルも持ってるけど、わたしは全くの丸腰だ。まあ、銃なんて持ってても使い方すら分からないけど。
万が一の護身用に、麻酔針の入ったボールペンを渡された。キャンプの時に安室透を眠らせたものと同じものだ。
その安室透、零は今までラムの正体については何も教えてくれなかったけど・・・コナンくんによれば、この状況になって、やっと脇田がラムだと認めたそうだ。
すぐに工藤邸を出て、昴さんと二人で例のバーの扉を開けたのだけれども。
「当店は会員制の為どなたかのご紹介がありませんと・・・」と入店はやんわり断られてしまった。
断られることはある程度予想はしてたので、さほどショックでもない。
でもあまり広くない店内には店主と思しき男性が一人いるだけで。
店の中の全ての席は入口から見えている筈なのに、客の姿が一人も見当たらないのだ。
ジン達が店を出たという報告は受けていない。どういう事なのか。
従業員しか入らないような場所(キッチンやバックヤード?)にいるのか。それともトイレか・・・大の大人の男が二人同時にトイレにいるとは考えにくいけど。
バーの扉を閉め、昴さんと顔を見合わせる。
「かおりさん、ここの真上のお店に行ってみましょう。建物の作りを見てみたいです」
「ですね・・・」