第28章 烏羽色の尻尾
翌朝。工藤邸へ報告を聞きに行き、またホテルに戻り。
秀一さんが寝ている間はわたしが窓際に座って外を眺め。
それを繰り返しながら、特に何も起こることなく二日目の夜になった。
秀一さんとルームサービスで夕食をとり。(ホテルマンが部屋に入る時は、ライフルには布を被せているので大丈夫!)
またぼんやり窓の外を見やる。
ちなみに今はジョディさん達が張り込んでいる時間だ。
その時初めて、店主でもない、酒屋でもない人物が営業中のバーに近付いているのに気付いた。
秀一さんはライフルを構える。
全身に鳥肌が立つ感覚に襲われる、それとほぼ同時くらいに秀一さんのスマホにコナンくんから着信があり。
急いでわたしが出ると、“男が入るよ!”と、コナンくんは早口で言う。
スマホを持ったまま、双眼鏡を片手でしっかり握りしめ、その男が入っていく様子を見つめたまま動けなくなる。
宗介さんのメモにあった組織の男の人物像、そのままの男が、そこにいる。長い銀髪、長身・・・殺気を振り撒いているような雰囲気。
「ジン・・・大当たりだ」
秀一さんがどこか嬉しそうに低く呟く。
その男は、辺りを一度見渡して、バーの扉を開け、店の中へ消えていった。
「・・・アイツが、そうなんだ」
「ああ。顔は覚えたか?」
「覚えるも何も、特徴的すぎます。あの容姿」
張り詰めていた空気が少し和らいできて、コナンくんと通話中だったのを思い出す。
「もしもし!ごめん!コナンくん?」
「もしもし?どうする?一回集まる?」
「どうしよう・・・?昴さんと相談してかけ直すよ!また後でね!」
通話を切り、スマホを置くと、秀一さんもライフルから身体を離し、もうひとつの双眼鏡を手にした。
「コナンくんが、一回集まる?って言ってるんだけど」
「まあ待て。店主は組織の人間でないとすると、ジンは一人で飲みに来たと思うか?」
「・・・誰かまだ来るかもってこと?」
「そうだ。少し待てば、少なくとももう一つは、収穫を得られるんじゃないか?」
コナンくんに電話をかけ、“少し様子を伺ってから向かう”と伝え。
秀一さんと二人、窓の外をじっと睨む。
今からジンの連れが来るのなら。
組織の中でも最高クラスの幹部とも言えるこの男を待たせる程の人物、もしくは待たせる事を臆しない人物がやってくる・・・のか。