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エラリーの彼女【名探偵コナン】

第28章 烏羽色の尻尾


せっかく秀一さんと二人、素敵な部屋で過ごせるのに、少しも楽しい気分では無い。

リビングのような部屋と、大きなベッドが二つ並ぶ寝室に、トイレ、お風呂・・・とりあえず部屋の中を見て周り、最初の部屋に戻ってきて。

秀一さんが手にしている物を見て、背筋が寒くなる。

彼はライフルをカメラの三脚のようなものに乗せて、窓の外へ銃口を向け、スコープを覗きながら位置を調整してるようで。

・・・部屋に似つかわしくない黒い物体が、物凄く目立って見える。


「秀一さん・・・撃つつもりなんですか」

「最悪の事態が起これば、撃つかもしれん」

「最悪の・・・」

「例えばだが、仲間の誰かが組織の奴に見つかり、命の危険に晒されたら、逃げられるよう援護する」

「・・・それは、たしかに・・・」

「別に組織の奴が見えたら構わず撃つという訳ではない」

「ですよね・・・」


窓際に近付き、スコープを覗き込む秀一さんをマジマジと見つめる。
ちょっと、格好良いとも思わないでもない。怖いけど。


「普段使うのはこっちだ、ほら」


双眼鏡を渡されて。自然とそれで窓の外、バーのある辺りを見てみる。時計の針で言えば11時の方角、少し斜め左の方向だ。

おお・・・見える。通りにはさっきよりも人が増したし、例の店の看板も点灯してる。


「優作さんに電話してくれ、準備は整えたと」

「はいっ」







優作さんに連絡を取り、その後特に何も起こらず数時間が過ぎた。


尾行は割と楽しい。でも長時間の張り込みはあまり好きではない。一ヶ所に留まってずーーーっとじっとしているのは得意じゃない。

二回ほど秀一さんのお使いで、近くのコンビニで買い物してきたけど、それがなかったらダメだったかも。
(もしかしたら秀一さんは、ムズムズしているわたしを気遣って、出歩かせてくれたのかもしれない)



日付も変わり、零達とジョディさん達が交代する時間になり。

わたしは双眼鏡を握り締め覗き、路地で何事も起こらないのを見守る。


交代する張り込み人員の準備が整ったら、先の張り込みは終了、一度優作さんの所に寄り、七時間程休んで、また交代、を繰り返す予定らしい。

そして、張り込みを終えた人達が報告の為工藤邸に寄るその度に、わたしもそこへ行き話を確認してくる事になっている。
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