第28章 烏羽色の尻尾
「ジョディくん達にはこちらに寄ってもらうとして・・・誰か降谷くんにこの事を伝えて意見を聞いてきてくれないか?さすがに電話でこれだけの内容は話せない。盗聴されたら言い逃れできん」
優作さんがわたし達の顔を見渡す。それなら。
「わたし行ってきますよ。どこで張り込んでるの?」
「いや、待ちなさい、かおりちゃんは」
「だって夜の飲み屋街でしょ?コナンくんじゃ目立つし、昴さんはあんまり公安の二人と面識無いし、有希子さんなんてバレたらいろんな意味で大変じゃないですか」
「まあ俺が車で送っていけば問題ないでしょう」
「・・・そうか・・・そうだな・・・」
優作さんにはやっぱり渋られたけど・・・わたしがお使いとして向かう事になる。
車を元の昴さんの車に乗り換え、例のバーの近辺へ向かう。
また一度は目的の店の前を通り過ぎて、近くに車を停めて。
そこから一人降りて、徒歩で零達のいる所を目指す。
今彼らはバーの向かいのビルの二階の居酒屋らしい。
不自然でない程度に周りに視線を配りながら歩き・・・
その居酒屋のビルに目をやると、窓際に風見さんを発見。一瞬、目が合った気がする。
そこの階段を登り、店に入る。ガヤガヤした雰囲気の盛況なお店だ。
「連れが先に来てるんで・・・」と入るなり窓際の方へツカツカと歩いていけば、窓の方を向いた、知ってる風な後頭部が二つ見え。彼らの後ろから声を掛ける。
「こんばんは。優作さんのお使いで来ました」
その二つの頭が一斉にこちらへ向きを変える。
「そうだと思ったよ、どうぞ、こっちに」
零の隣を促され、座る。
テーブルの上には食べ物が並んではいるものの、二人ともお酒は飲んでいないようだ。わたしもウーロン茶を頼む。
「かおりさんは飲んでもいいのに」
「やめてよ・・・飲みたいのちょっと我慢してるんだから」
お茶で乾杯をし、零達の手前、“赤井秀一が宗介さんの所で聞いてきた話”を伝える。
「その女、ベルモットだな、多分」
「やっぱりそうだよね・・・零はベルモットの目的とか聞いてない?」
「さあ・・・奴はあまり自分の事は話さないから」
零にも見当がつかないのなら、わたし達には尚更分からない、か。
窓の外の路地には人が次々往来しているが・・・まだバーの看板の明かりは点いていない。