第28章 烏羽色の尻尾
“組織”のその人物、つまりここに何人もの人を捕らえている人物というのは・・・話を聞くには“高飛車”で“金髪”、“英語を話す”、“若い女”らしく、どうも聞いた事のある人物のように思える。
口には出さないが、昴さんと目を合わせて、頷く。
ベルモット・・・?なんだろうか。
「でも・・・なんで宗介さん達はここに連れてこられて、普通に暮らせてるんですか?しかもわたし達も普通に入れるって・・・どういうこと?」
「ここにいる俺達は・・・何故かあの女に生かされている・・・今はまだ組織を壊滅させられては困るからここで大人しくしてろとか言われてな」
「・・・逃げれない、の?」
「気を失わされてる間に足にチップを埋め込まれてしまってな。GPSで監視されているようだ。ここから離れたら足ごと吹っ飛ばすと脅されている」
「・・・そういう事でしたか」
「然るべき時がきたら解放するんだと。その時は組織を潰そうが何をしようが好きにすればいいそうだし、ちゃんと食糧は週に二日運び込まれるし、エアコンもトイレも風呂も使える、おかしな話だろ?」
おかしすぎる。まあ、邪魔者は殺せばいいってものでもないけど・・・
「・・・宗介さん、ちょっと三人だけで話せないですか?」
周りの人達は信用していいのかどうかも分からないので、一旦部屋から出てもらい。
部屋の外には聞こえない程度の声で、昴さんの正体がFBI捜査官であること、しかも宗介さんと同じ組織を追って同僚数人と日本で捜査中である事・・・
そしてなんと公安の信用できる人間とも組んで、今日から宗介さんの教えてくれたバーの周辺を張り込みする予定である事を伝えた。
「俺が面倒見なくても葵は一人で立派に警察とツテを作ってたんだな・・・ナイトバロン(優作さん)繋がりか?」
「それは・・・偶然なんですけどね・・・あのポアロの安室さん、あれが警察庁警備局の捜査官だったんです」
「・・・何?」
「驚くのはまだ早いですよ、彼は例の組織のメンバーでもあります、コードネームはバーボンです・・・」
「本当か!成程な、偶然、か。実は安室透をあのバーの傍で見かけた事があってな」
「彼もそこで組織の人間を車から降ろした事があると言っていました」
「でも信用できるのか?奴は・・・」
「大丈夫です」
「僕も彼なら大丈夫だと思っています」