第27章 遂に動き出せる
「そんな人、いましたっけ・・・?」
「ほら、赤井秀一さんですよ、FBIの」
「あー・・・なるほど・・・どう思います?安室さん・・・」
昴さんは一体何を言い出すんだと思ったが、ナイスアイディアかもしれない。
零の顔色を伺ってみると・・・苦笑いが崩れたような難しい顔しちゃってる。
「・・・たしかに奴なら、心配の必要はないでしょうね」
「じゃあ・・・頼んでみるよ?」
「・・・その代わりそれ以外の余計な事はするなと言っておけよ」
「・・・はいはい」
「昴さんは・・・なぜ奴を向かわせようと思ったんです?」
「・・・僕からしたら彼ほどの人がこの捜査に参加していない事の方が不思議でしたので」
一気に零の気分は底辺近くまで落ち込んでしまったようで。
彼は無表情で料理に次から次へと箸を伸ばしていく。
昴さんをチラリと見ると、普段と変わらず淡々とした感じで上品に汁物を啜っている。
わたしは・・・せっかく最後の美味しい食事なんだから、さぞ美味しそうに頂いてやろうと決めて、茶碗蒸しをひと口頬張った。
ところがコレが思った以上に熱かった。口の中をハフハフしていると、昴さんも零もクスクス笑い出し、次第に声を上げて笑われ。
結局笑いながら食事は終わり。
米花町に戻って、わたしと昴さんは工藤邸で降ろしてもらう。
安室さんは「バーの周辺を見てくるから、優作さんによろしくお願いします」と言い残し、また車を走らせていった。
工藤邸に入って、一気に肩の力が抜ける。
「いらっしゃーい!」
「おじゃましまーす。あー疲れたぁ・・・」
「お疲れ様。どうだったかな?メールの送信元の彼は」
リビングにて、工藤夫妻に今日のこれまでの事を報告し。
結局、山奥の建物には今から向かっても夜中になってしまいそうなので、明日早朝からわたしと秀一さんで一度行ってみる事になる。
優作さんには渋られたけど・・・
宗介さんと一番面識があり、尚且つ最も信用されているのはわたしなのだ。それを前面に押し出した結果だ。
一通り話が終わると、昴さんと優作さんは二人で席を立ち、書斎の方へ向かって行った。また二人でコソコソ話すつもりなんだろう。