第27章 遂に動き出せる
とりあえず車に乗り込んだところで、時間も時間、ちょうどお昼時なので、「これからの事を密談しつつランチにしますか?」と安室さんが提案してくる。
「わたしあんまりランチって気分じゃないかも・・・でも・・・」
「・・・でも?」
「宗介さんは、“食べるのも探偵の仕事だ”って言ってたなーって。なんか急に思い出しました・・・」
「宗介さんはよく食べるらしいですね、エラリーではオムライスとカレーでしたか?」
「そう!スプーンでガーッてかき込んで食べるのー・・・やっぱりごはん行きましょう!食べれる時に食べとかなきゃ。安室さんこれから張り込みあるんだし」
「ですね。何か食べたいものあります?」
さすがに“最後の晩餐”ではないけれど、張り込みが始まれば、しばらくゆっくり食事も出来なくなる。最後に美味しいものを食べに行こう、となり。
(零には言えないが、秀一さんだってこれからしばらく張り込みだ)
零に店の選択を任せると、立派な佇まいの和食屋さんに連れてこられ。
(勿論、他の客と顔を合わせず食事できる店だ)
料理が揃い、女中さんが退室し、早速山奥の建物についての話を続ける。
宗介さんは、そこから出る事が出来ないし、電話やスマホ、パソコンの類も使えない状況だが、生活はできているよう。
そしてなぜかその建物は、外から簡単に覗けて、中に入って出られる位、警備は緩い。
これは比較的自由度の高い監禁なのか?
零が言っていた、組織の中でも良識のある人が、殺せと命じられた対象者を殺さずに匿っている所、というのがソコなのか?
「その施設も調べた方が良さそうですよね」と昴さんが言う。
「あの大学生が簡単に覗けたんだから、わたしが行って宗介さんと直接話してくるのが一番早いんじゃない?」
「かおりさんはダメだ」・・・また零に“ダメ”だと言われた。
「でもみんな東京で張り込みがあるでしょ、わたしなら暇だし」
「何かあったらどうするんだ、万が一で助けに行くにも東京から六時間はかかる」
零と暫く言い合いになり・・・
昴さんが大きな咳払いをして、それを遮った。
「あの・・・もう一人、頼りになりそうな方がいらっしゃったと思うんですが。彼はもう別の任務に着いていらっしゃるのですか?」