第27章 遂に動き出せる
わたしはわたしで、昼から誰かに話したかった所謂愚痴を有希子さんに聞いてもらっていた。
昴さん達が女子大生にデレデレしてた件が主だ。
まあ、実際その女の子達と何かあった訳でもないんだし、人当たりが良くて、女性にモテるのは、ひとつも悪い事ではない、と有希子さんは言う。
「気持ちは分かるわよ?けど、かおりちゃんが彼女なんだから。私の彼氏はイイ男よ!羨ましいでしょーって構えてればいいのよ!」
「考え方ですね・・・」
「だって私の旦那なんて世界中にファンがいるのよ?一々嫉妬してたら身が持たないもの」
「それ聞いたらなんか気にならなくなってきたかも」
「それでいいのよ。モテない旦那より、モテる旦那の方が魅力的じゃなーい?」
そうしている間に優作さん達の話は終わっていたようで、リビングの入口から彼らに声を掛けられる。
「何を楽しそうに話してる?」
「お互いの旦那のノロケみたいなものよー、ねえ?」
「あはは、まあ」
「こんな時に呑気だな・・・」
「こんな時だからこそよー。ずっとピリピリしてたら、ホントに神経すり減っちゃうわよ?大体優作はマジメすぎるのよ・・・」
言い合いを始めてしまった夫妻を宥めて、わたしと昴さんは帰宅する。
簡単に食事を済ませて、早く寝たいし、二人一緒にお風呂に浸かる。
いつもだったら、心からリラックス出来る時間だけど、今日は少し違う。
ずっと緊張してるというか・・・落ち着かないというか。頭の中が完全に休まらない。
「ふうー・・・」
「・・・今日は疲れたか?」
「うーん・・・考える事が多すぎてもうなんて言うか・・・」
「・・・やる時はやる、だが休む時は休むのも大事だぞ。これから暫くは気を張るだろうから特にだ」
「そっか、そうですよねー・・・」
「んーっ」と腕を伸ばして、後ろの秀一さんに寄りかかる。
後ろからお腹辺りに回された腕に、自分の腕を重ねて。
無心で、秀一さんの息遣いと穏やかな鼓動を感じるだけ。
それだけで、昨日から宗介さんの事や組織の事、ずっとグルグル考えを巡らせてばかりで重かった頭が、軽くなったような気がしてくる。
「秀一さんがいてくれて良かったです・・・」
「それは・・・お互い様だな」
きゅっと抱きしめられて、首元に唇を付けられ、目を閉じた。