第27章 遂に動き出せる
その学生に氏名を尋ね、探していた彼で間違いない事を確認して。わたし達が探偵である事を明かすと、驚く事にその彼はペラペラと話し出した。
「うわマジで来た!つーか来るの早!」
「僕達が来るのを知っていたのか?」
「メールのやつだろ?昨日の。それ、俺のスマホからだから」
「そう。そのメールの件で来たんです。詳しく聞かせてもらえますか?」
先日、彼は友人達と隣県の山の中を紅葉を見つつ、あてもなくドライブしていたそうだ。(ほんとココの学生って暇みたいだ)
その時に、山中にポツンと建っている建物を見つけ、面白半分でその中の様子を覗いてみたと言う。
そしたら中の男に見つかり捕まってしまい、スマホを出せと言われ。男にしばらく自分のスマホを操作され。
このまま殺されるのかも、とも思ったが・・・そんな事は無く、その男が文面を作ったメールを、この施設を出て、都内に戻ったら送信してくれと頼まれたんだと。
「近い内に女探偵が俺を探しに来るから、ソイツにそこの場所を教えてやれって言われたんだ。アンタらの事だろ?」
「・・・その施設の男の人ってどんな人だったの?」
「フツーのおっさん?渋い感じ」
「こんな顔?」
宗介さんの写真を見せると、「おー!コイツコイツ!」と学生は言う。やっぱり宗介さんで間違いないんだろう。
施設の場所を地図上で教えてもらう・・・ほんとに山奥だ。「新興宗教の奴らの集団かと思った」「他にも何人か人がいて、そこで暮らしてるみたいだぜ」と彼は言う。
「他には?」と更なる情報を求めたが、一体その施設が何なのか分かるような情報は出てこず。
わたし達はそれぞれ顔を見合わせ、三人同時に溜め息を吐いた。
「お前らソコに行くのか?結構ヤバい所だと思うぜ?この事ネットに晒したり警察に通報したら命は無いと思えとか言われたしよー」
「その通り、命が惜しければ誰にも話さないのが身の為だ。これは脅しじゃない」
「それはちょっと盛ってるだろ?」
「盛ってなどいない、君が口を滑らせただけで、君だけでなく何人もの人が死ぬ事になる」
安室さんが(もはや安室透には見えない凄んだ顔付きだけど)その彼に今回の件を口外しない事を強く言い付ける。
凄みに圧倒されたか、だんだん顔色が冴えなくなってきた彼に別れを告げて、わたし達は大学を後にした。