第27章 遂に動き出せる
いつもなら美味しく味わって食べている零のご飯が、今日は只の食糧と化す。口に入れ、咀嚼し、飲み込む作業を繰り返しながら、二人であれこれ考えを巡らせる。
まず、メールの送信元の特定は公安に任せろ、と零が言ってくれたので、お世話になる事にした。
そして、見張れと依頼された場所は一体何処なのか。
パソコンで地図を開き、道路沿いの風景が360度見られる某サービスで確認すると、その店は、雑居ビルの地下にあるバーのようだった。
ハッキリとは確認できないが、雰囲気的に会員制っぽい、お高そうな店。
「ふーん・・・零はこの店知らないの?」
「店は知らないが・・・近くでベルモットを車から降ろしたことが何度かある」
「じゃあ組織の何かの場所なのかも?」
「かもしれないけど・・・かおりさんは、何もしなくていい。この件は僕が預かる」
零は公安だけで捜査するつもりなんだろうか。
わたしは・・・秀一さんや優作さん、コナンくんに早く伝えて皆で策を練るつもりだったから。
「わたし宛の依頼なのに」
「組織絡みだとしたら、危険すぎる」
「でも優作さんとコナンくんには相談するから。FBIにも伝わると思うけど・・・それは構わないよね」
「公安だけでは頼りないか?」
「そういう意味じゃない・・・零って頭硬いよねほんと」
「好きにしなよ。僕は僕で動くから」
「・・・これこそ情報を共有する時じゃないの?」
「FBIには協力したくない」
「そんなこと言わないで零・・・お願いします!」
頭を深く下げ、下げたまま彼の返事を待つ。
一秒、二秒、三秒・・・無言の時が流れる。
「かおりさん・・・とりあえず頭上げてくれよ・・・分かったから・・・工藤さんやコナンくんはいい、でも赤井と手を組むのだけは御免だからな」
「ほんと!ありがとう!」
顔を上げてニコリと笑う。
そうと決まれば早速今夜皆で落ち合おう、と作戦会議の要請を優作さんとコナンくん宛に送る。
(文面の表向きは食事会だけど)
零は、エラリーを早退すると言って、空になっていた皿を持ち事務所を出ていった。
わたしも今日は早じまいだ。早く帰って、秀一さんに伝えなければ。