第27章 遂に動き出せる
のんびりとした日が続き。木々の葉っぱが色付く頃になってきた。
紅葉を眺めるのは良いけど・・・ふと、去年は大変だったなーと思い出す。あの広い工藤邸の庭の落ち葉掃きは、思いの外ハードだった。
今日は事務所の方で仕事。
ちなみにエラリーはママと安室透で営業中。
昼過ぎに、事務所宛に一通のメールが届いた。新規の依頼だろうか。
開けてみるとちょっと変わった依頼で・・・でも最後まで読んでみると、とんでもない事に気付いたかもしれなくて。
立ち上がり、事務所の奥にある、宗介さんの自宅スペースへ走って向かい、彼の私物を漁る。
どうしよう・・・多分、そうなのだ。
届いた依頼の内容は、とある店を見張りその店に出入りする人物をリストアップして欲しい、というもので。
ただ、バレると非常に厄介な相手なので毎日張り込む場所、容姿、車等は必ず変えて細心の注意を払う事、一人ではなく、信頼できる第三者と組んで遂行する事、となんだかお節介な事まで書いてあり。
そしてここが最大のポイントなのだが、送り主の名前が・・・“長田浩輔”となっているのだ。
この名前に見覚えのあったわたしは、宗介さんの私物を漁って、自分の記憶が正しかったのか確認をしていたのだが。
・・・やっぱり見つかった。“長田浩輔”の名刺。
それを手に、固まり、しばらく動けなくて。
安室透が昼食を持って事務所に入ってきたことに全く気付かなかった。
「かおりさん?」
「は!はい!あ、むろさん・・・」
「今は降谷だ、どうかしたのか?」
「零・・・どうかしたよ・・・ちょっと、聞いて・・・」
手にした名刺を持ったまま、事務所の方へ戻り。昼食そっちのけで先程のメールを零に見せる。
「胡散臭い依頼だな・・・」
「でしょ?わたしもそう思ったんだけど・・・」
「けど?」
「この送り主が・・・」
「長田浩輔(ながたこうすけ)?知ってる奴なのか?」
「これ、多分、“おさだこうすけ”って読むの・・・宗介さんのたまに使う偽名・・・」
奥から取ってきた名刺を零に見せる。
フリガナが“Kousuke Osada”とアルファベットで表記してある。
「簡単なアナグラムか」
「そう」
「・・・罠じゃないよな」
「罠なら普通に“岡田宗介”で送ってくるんじゃない?」
「そうだよな・・・」