第26章 これも全て巡り合わせ
「おい・・・かおり・・・、かおり」
遠いようで近い所から秀一さんが呼んでいる。
「ん・・・」
「風呂、沸かすが・・・入るか?」
「んー・・・」
「寝るのか」
「んー、もちょっと、このまま、でいたい・・・」
「もう10分近くこのままだぞ・・・」
「うそ・・・わたしねてました・・・?」
「おそらくな。お前・・・化粧落として寝たいんだろう?せめて顔位は洗ったらどうだ」
「あーほんとだ・・・」
起き上がった秀一さんに続いて起きようも、起き上がれず。手を伸ばして引っ張ってもらい、布団を肩から掛けられる。
ティッシュやらお水やら、お風呂の用意も秀一さんにしてもらって・・・認めたくないけど、我ながら自分は子供みたいだなと思い・・・ベッドの上で縮こまった。
結局お風呂に入る事になり。
温かいお湯に二人で浸かり、後ろから秀一さんに抱えられる。これも、すっごく好きな時間だ。
「かおり・・・」
「なんですか?」
「お前は、本当に俺でいいか?」
「・・・どうしたんですか・・・秀一さんらしくない」
「俺じゃない奴との方が、もっと幸せになれるかもしれん・・・と思ってな」
「それって秀一さんの仕事が普通じゃないからですか?」
「主にそれだな・・・色々我慢させる事も多いだろう」
「でももしそうだとしても・・・秀一さんがいいんだもん・・・」
膝を抱えて顎をお湯に浸ける。きっと顔は赤くなってるだろう。
「俺もかおりでないと・・・考えられんな」
益々顔が赤くなりそうな事を秀一さんが言ってくるもんだから・・・ひとりニヤけながらお湯の中の膝を見つめた。
もし、秀一さんと出会ってなかったら、今頃どうしてただろうか。
・・・そもそも宗介さんがあの組織に絡んだ時点で、結局いつかはそれを捜査している秀一さんと知り合う事になっただろうか。
秀一さんの住んでたアパートがもし燃えてなくても・・・
いつかは工藤夫妻の所を秀一さんは訪ねるだろうから、知り合ってたかもしれない。
そしたら、やっぱりこうやって恋に落ちたんだろうか。
お風呂から上がり、例の事件が解決したのだから、どこかへ出掛けよう、という話になり。
でも行き先を決めらないまま・・・ベッドに入って眠りについた。