第26章 これも全て巡り合わせ
まだ秀一さんからハッキリとプロポーズされた訳じゃない。でも、実の弟を前にしてまたそういう風に言われると・・・本当に思ってくれてるんだ、と実感がわいてくる。
「姉さんって欲しかったけど・・・僕より年下?こんなに可愛いとどっちかって言うと妹みたいだよね」
「た、太閤名人・・・」
「もうその呼び方やめようよ、もう他人じゃ無いんだからさ」
「じゃあ、秀吉さん?」
「うん。くすぐったいけどいいね」
秀吉さんとわたしが二人でニコニコ笑ってるのが気に入らないのか、秀一さんは一人面白くなさそうな顔をする。
「秀吉まさか・・・そもそもお前はなぜ病院でかおりに声を掛けたんだ」
「真純の知り合いだと思ったから」
「それだけか?」
「なんか怖いよ兄さん・・・そりゃあ、可愛いかったから余計に気になったって言うのは否定しないけど」
秀一さんの顔面が険しく曇っていく・・・まずい。
「秀一さん・・・まあ、結果こうやって会えたんだからいいじゃないですか」
「かおりもかおりだぞ。声を掛けられたら誰とでも簡単に番号を交換するのか?」
「まさか!太閤めいじ・・・秀吉さんだからですよ!」
「本当か?」
「兄さん・・・かおりさんをいじめないで」
「そうです!いじめないでください!」
「いつもは虐めた方が悦ぶ癖にな」
「何言ってるんですか・・・」
「かおりさん・・・こんな兄さんのどこが良かったの?無愛想だし自分勝手だし」
「・・・なんですかね、カッコいいじゃないですか色々・・・ちゃんと優しい所もあるし・・・秀吉さんとか真純ちゃんの話する時とかは、すっごい可愛い顔したりもするんですよ!」
これ以上秀一さんを不機嫌にさせないように言ったつもりだったんだけど・・・
秀一さんは黙り、秀吉さんはニヤニヤ笑い出したから急に恥ずかしくなってきた。惚気けに聞こえただろうか。
でもその後話題は秀吉さんの恋人の事になり。秀吉さんは散々微笑ましい惚気け話を披露してくれて。
恋人のおかげで今の自分があるんだ、彼女の為に絶対もう一度七冠王になるんだ、と息巻いて喋る姿は、テレビの中の太閤名人みたいに凛々しくてキラキラしてて。
それだけ思われてる彼女が羨ましくなるくらいだった。