第26章 これも全て巡り合わせ
翌日。
連続狙撃事件の解決もあってか人の動きは元通り。
いつも通りのエラリーでゆっくりと仕事を始め、すっかり客足が戻りバタバタのランチタイムを乗り越え、パスタを片手にバックヤードへ引っ込み休憩に入った。
そろそろ休憩も終わりかという所でママに呼ばれ、表に出ると昴さんが来ていた。
カウンターの前に立つ彼が「今日は人と待ち合わせなので、テーブルでいいですか」と角の席を指差して言う。
「どうぞー」とわたしは奥を促したけれど、ママは明らかに残念そうな顔をする。
昴さんも察したんだろう。「でも相手が来るまではこちらで待たせてもらいます」と椅子を引いてカウンターに座った。
コーヒーをいれて、昴さんの所へ運び。またカウンターの中に戻り昴さんの前に立つ。
胸が高鳴ってきた。もうすぐ、兄弟の久々の再会だ。
相変わらず昴さんは涼しい顔してるけど・・・
「ママにひとつお願いがあります」
「あら!何かしら?昴くん」
「今から僕が会う相手の方の事は、誰にも話さないで頂けますか」
「・・・いいわよ?けど、一体誰と会うの?」
「来てのお楽しみ、でしょうか。でも、約束してください。騒ぎになると相手に迷惑をかけてしまうので・・・」
「ママ、安室さんにも言わないでね・・・」
「昴くんのお願いだもの。約束するわ」
しばらく三人で談笑した後、ママも休憩の為バックヤードに引っ込んだ。
「いよいよですねっ!」
「かおりさんは少しソワソワし過ぎです。もう少し落ち着かれた方が良いのでは」
「だって楽しみなんですもんー・・・」
拗ねた顔をして昴さんを睨んでいた所、入口の扉が開き、太閤名人が入って来た。
髭は剃られているものの、ジャージに丸眼鏡、髪には寝癖がついたままという出で立ちだ。
「あっ!こんにちは!いらっしゃいませ!」
昴さんも立ち上がり、一礼した。太閤名人も会釈をし、カウンターへ近付いてくる。
二人の視線がしっかり絡んだのを確認して・・・昴さんを太閤名人に紹介し、角のテーブル席へ案内した。
昴さんには新しいコーヒーを、太閤名人にはカフェラテを頼まれ、一旦わたしはカウンターの中へ入る。
・・・何喋ってるのか、めちゃくちゃ気になって仕方がない。