第25章 異次元の狙撃手、その裏側。
秀一さんが腕を組みながらも、面白そうな顔をしてるから。つられてニンマリしてしまう。
「そんなに楽しみか?かおり」
「秀一さんだって・・・」
今日は久しぶりに秀一さんが上機嫌だ。まあ、そう言うわたしもだけど。お酒がスイスイと進む。
また“明日”というのが、急ではあるけどちょうど良い。
零は明日はエラリーにもポアロにも出勤しない日だし、真純ちゃんもまだ入院してるから、誰かに見られて困る事は無さそうなのだ。
でも有名人が来たとママや常連が噂して後日零の耳に入るのは良くないかもしれない・・・
「ねえ秀一さん?太閤名人と会うの、エラリーで大丈夫ですか?後々噂になると面倒くさくなりそうな気がしてきました・・・」
「心配なら・・・眼鏡にジャージで来させればいい」
「たしかにそれなら只のお客さんにしか見えないですね・・・あ、悪口じゃないですよ!」
赤井秀一が何らかの事情で現在身を潜めている事は太閤名人も分かっているだろうけど、沖矢昴の姿で現れた人物をそれだと見抜けるだろうか。
しばらく沖矢として話してみて大丈夫そうなら、秀一さんは弟に事実を伝えようと思ってるみたいだ。
そのときは「ウチの事務所使ってください」と言ったのだが。
「ここに連れてきて一緒に晩飯でもどうだ」と秀一さんは言う。
「太閤名人をウチに連れてくるんですか!?」
「嫌なのか」
「嫌じゃないけど・・・よく知らない人を家にあげるのに抵抗があるというか・・・」
「知らんと言っても弟だぞ?かおりにとっても秀吉はいずれそうなるだろうし」
「・・・っえ、ああ、はい?」
今秀一さんは、“太閤名人がわたしの弟になる”と言ったのか・・・言ったな。
それって、それって・・・そういう事なのか。
「真純の事も、妹のように思っているから見舞いに行ってくれたんだろう?」
「え、ええ・・・」
急に心臓の鼓動が聞こえてきた。緊張・・・してるんだと思う。指先まで震えてくる。
秀一さんは素知らぬ顔のまま、お酒の入ったグラスを傾けている。その彼の横顔を呆然と見つめ。なんとか言葉を絞り出す。
「・・・あの、秀一さんは、わたしが、真純ちゃんや秀吉さんの姉になってもいいと思ってるんですか?」
「ああ。いいぞ、当たり前だ」