第3章 本当のあなたは
沖矢さんの車に乗せられ家に帰る。
何故か会話はなく、車内には独特のエンジン音がただ響くだけ。
安室という男性をエラリーのママに紹介されたが、宗介さんの手掛かりは見つかるだろうか。
それに、沖矢さんと安室さんは初対面じゃなさそうな感じだったけど。どうなんだろう?
よく分からないけど、今は組織に心当たりのあるらしい安室さんに頼るのが一番なのか・・・
車は工藤邸に着き、家の中に入る。
「かおりさん」
「はい」
「後で訳は話します、僕がいいと言うまで、黙っていてください」
沖矢さんが何やら機械を手に持ち、わたしの身体と鞄にかざす。
「・・・すみませんでした。もう大丈夫です」
「何・・・どういうこと?」
「かおりさんに、大事な話があります」
「・・・わたしもあなたに聞きたいことがあります」
テーブルに向かい合って座る。
「かおりさんからどうぞ」
「あなたからどうぞ」
「いえ。おそらく、かおりさんの知りたい事と、僕の話したいことは通じているんじゃないかと思うので」
「じゃあ聞きますけど、あなたは、一体誰なんですか?沖矢昴という人物は存在しないそうですが」
「・・・やはりそのことでしたね」
「教えてくれませんか」
「僕の大事な話というのも、そのことです」
彼は・・・自分は本当はFBI捜査官の赤井秀一なのだと名乗った。
そして、ペリペリと顔の皮膚をめくり、喉元をいじる。
「え?」
「これが本当の俺だ、声はこれで変えられる」
「うそ・・・!」
「変装術は有希子さんに教わって、変声機は隣の阿笠博士が作ってくれた」
「あかい、しゅういち、さん」
「そうだ。黙っててすまなかったな」
「いえ・・・何か事情があるんでしょうし」
「この事を知っているのは、工藤夫妻と阿笠博士、江戸川コナンというボウヤ、あと俺の上司一人のみだ。赤井秀一は、訳あって死んだことになっているから、今は沖矢昴として過ごしている」
「どうしてわたしに話そうと思ったんですか?」
「それなんだが。今日、安室という男に会ったな」
「はい」
「彼には、俺の事は絶対に話さないでほしい」
「やっぱり知り合いなんですね、そんな感じしました」
「昔の知り合いだ。しかも俺は、彼に殺されてもおかしくない程、憎まれている」