第3章 本当のあなたは
僕はわざとかおりさんの肩を抱いて外に出る。
それを見た奴が苛立つことを予想して。
予想通り沖矢はこちらを睨んでくる。
姿は違うが、久しぶりの対面に憎悪が込み上がる。
「あのー・・・安室さん?」
彼女を抱く手に力が入りすぎていたようで、驚かせてしまった。
手を離して、見送る。
「すみません。ではまた。かおりさん」
「はい。今日は本当にありがとうございました」
沖矢の元に駆け寄る彼女。親しそうに触れ合う二人。
それを見て、無性に腹が立つ。
二人は車に乗って去っていく。
もし彼が赤井であるなら、その大事そうにしている女を赤井の元から引き剥がしてやるのも面白いかもしれない・・・黒い思考が頭の中を巡る。
エラリーの鍵を閉めてママに挨拶をし、監視が着いていないことを確認しながら車で警視庁方面へ向かった。
警察組織の中でも僕が絶対的に信頼を置いている部下、風見に電話をかける。
「今何処だ」
「警視庁内ですが」
「僕も今そっちに向かっている、二人で話せるか」
「では、いつもの所で」
いつもの所というのは、警視庁近くの公園のことだ。
数分後、合流する。
「赤井の・・・景光を殺した赤井秀一の消息を掴みかけている」
「本当ですか!」
「あと一歩だ。確信が持てたらすぐに確保にかかりたい」
「作戦は」
「また追って連絡するから、そのつもりでいてくれ」
「降谷さん、あまり無茶はしないでくださいね・・・」
「無茶してでも追わなければならない相手だ」
「あなたは赤井のことになると冷静さを欠くことが」
「そうだな・・・気を付けるよ。あともう一つ内密に調べてほしいことがある」
風見にも、岡田宗介の行方を探ってくれと頼んだ。
僕は僕で組織の中を嗅ぎ回ってみる。