第25章 異次元の狙撃手、その裏側。
あれれ?と肩透かしをくらった気分で。
いつもならわたしがこんな格好してたら、秀一さんは胸やお尻のひとつでも撫でて耳元で意地悪なことを呟きそうなものなのに。
殺人を阻止できなかった事で気が滅入ってるんだろうか。
リビングに行くと、変装を解いた秀一さんはやっぱり機嫌の良くなさそうな顔でソファに座っており。
なんとなく、少しだけ距離を空けて隣に腰掛ける。
「出掛けてたのって、例の件ですか・・・?また狙撃があったってニュースで見ました」
「いや、まあ、そうなんだが・・・」
「はい・・・」
「真純がまた撃たれたんだ。命に別状は無いが意識が戻らんみたいでな、暫く入院するそうだ」
「・・・っ!う、そ・・・」
今日の昼頃、例の連続狙撃事件の次の犯行現場が急遽予測でき、近くにいたコナンくんと真純ちゃんはそれを阻止しようと動いたそうだ。
しかし犯人に気付かれ、射殺されそうになったコナンくんを咄嗟に庇った真純ちゃんが肩を撃たれ、救急搬送されて。
結果、ターゲットの男性も狙撃されてしまい。
コナンくんから連絡をもらって、秀一さんは真純ちゃんの様子を見に病院へ行っていたそうだ。(誰にも会わないようこっそり伺ったそうだけど)
自分が先に現場近くに居る事ができたら、こんな事は絶対にさせなかった、と苦々しく言う彼に、掛けるべき言葉がすぐに出て来ない・・・
しかも秀一さんがそんな状態の時にわたしはなんて事をしてたんだろうと思うと・・・胸が痛くて。
涙が溜まり出し、溢れてきた。
自分のしてた事が情けなくて申し訳ない。
勿論、真純ちゃんや秀一さんを痛ましく思う気持ちもあるけど、涙の大半の理由はおそらく前者だ。
「お前が泣いてどうする・・・」
「だって・・・っ」
「かおりが真純のことを思って泣いてくれるのは有難いが・・・泣いてもどうにもならん」
そう言われ背中を抱かれると、何も言えなくて益々泣きたくなってくる。
ごめんなさい、と心の中で何度も繰り返す。
「ほら、あれだ。お前が泣いていると俺も辛い」
「っ、ぅ・・・」
「風呂入ってくるから、かおりの美味いメシ食わせてくれ、な」
「うん・・・」
秀一さんに宥められるのがまた申し訳なくて、どんどん身体が縮む。
でもなんとか泣き止み。
彼は浴室へ行き、わたしは食事の準備をする。