第25章 異次元の狙撃手、その裏側。
うっとりとした時間が終わり、意識が現実に戻ってくると途端に頭が冴えていく。
また零とこうなってしまったことへの自責。
それから、今何時だろう、夕食は・・・秀一さんは・・・と甘い空気とはかけ離れたもので頭を埋め尽くされる。
入口近くに置きっぱなしだった鞄からスマホを取り出しボタンを押すと、時刻は夕方。そして沖矢昴からのメッセージの通知を見つけ、背筋を冷たいものが流れると共に胸が痛くなる。
メッセージアプリを開いてみると、急な用事ができたから出掛けてくる、夕食は少し遅くなるが家で食べると思う、という内容だった。
例の元米軍兵絡みの事だろうか。だとしたら秀一さんは銃を持って行ったのか?大丈夫だろうか・・・
バタバタ急いで帰らなくても済みそうなのは助かったけど、今度は別の不安が頭を支配し始める。
零とホテルを後にし、米花町の自宅近くのスーパーまで送ってもらう。
そわそわした心を見透かされたんだろう、「どうかしたのか?」と聞かれて、「別にー?」と明らかに嘘っぽく答えてしまい。
なんだか変な空気のまま車を降り、別れた。
食材を買って帰り、秀一さんが帰ってきたらすぐ食べれるように食事の準備をしつつ、テレビを付けて音だけを聞いていると、今日の昼間また男性が射殺された、犯人は依然逃走中、というニュースが耳に入ってきた。
・・・つまり、秀一さん達は阻止できなかった、という事か。
ひとりお風呂に入る。身体はサッパリしたはずだけど、妙な胸騒ぎは落ち着かないままだ。
お風呂から上がり、タオルを体に巻きあれこれしていると、秀一さんが帰ってきた気配がした。
「かおり?いるんだろ?帰ったぞ」
「おかえりなさーい!すみません!こっちにいますー!」
「風呂か」
脱衣所の扉が開かれ、ハッとする。そう言えばこんな格好だ。
「・・・おかえりなさい」
「ああ」
「すぐご飯にします?お風呂もまだ温かいけど・・・」
「そうだな・・・先に風呂にするか」
ボソッとそう言いながら秀一さん(顔は昴さんだけど)が近寄ってきて、身体を抱き寄せられ額にキスをされて。
でもすぐに身体は離れ、彼は脱衣場を出てリビングの方へ向かって行く。
・・・あれ?