第25章 異次元の狙撃手、その裏側。
「最近作らせてばかりだな、すまない」
「ごはんのこと?」
「ああ。明日は俺がやろうか」
「えっ!いやいや、今は秀一さんの素晴らしい頭脳は犯人確保の為に使ってください!家の献立なんて考えなくて大丈夫ですから!」
「しかし俺は一日中家にいるんだぞ」
「でも、いざとなったらすぐに出動なんでしょ?」
「それはそうだが・・・」
「いいんです。でもその代わりこの件が解決したら・・・また二人だけでどこか泊まりで出掛けたいかなー?」
「・・・いいぞ、分かった」
咄嗟に思いつき出てきた“お泊まりしたい”だったが、これが中々の効力を発揮してくれたのか。
秀一さんの表情が和らいで、口元はうっすら笑んでいるようにも見えてきた。
「約束ですよー!」
「ああ・・・こんな時だがお前と話していると気が楽だ」
「わたしって緊張感無いみたいですからね」
「そうとも言える。しかしな、宗介さんがかおりを東京に連れてきた理由がよく分かる」
「宗介さんねぇ・・・」
わたしが東京に出てきて約一年、つまり宗介さんの失踪からも一年近く経っているのだ。
未だに有力な手掛かりは無く、でも悪い話も聞かない。
元気にしていてくれればいいのだけれど。
「大丈夫だ、必ずまた会える」
「・・・はい。信じてます」
でも今は、連続狙撃事件の犯人確保が先決。
銃やライフルを所持している事が想定される犯人を制圧するには、やはりこちらにも銃が必要。
次の犯行現場の予測がつけば、ターゲットを射殺しに来る犯人をこちらが逆に待ち構え狙撃し、射殺を断念させ、確保できる、と秀一さんは考えているみたいで。
それには犯人の銃を撃ち壊すのが一番良いが、かなり正確な射撃の腕が必要とされるそうだ。一発で決めなければこちらまで撃たれてしまう。
そして「それができるのは、俺しかいない」そうで。
次の犯行場所が特定でき次第、秀一さんはライフルを持ち犯人を狙撃できる場所に向かうつもりなんだと。
そう言いながら銃の手入れをする秀一さんの姿は、怖いような格好良いような・・・複雑。
黒の組織の壊滅に比べれば、遥かに容易なこの指令。
ここの所、FBI本部に良い報告を上げられていないジェイムズさん達は、この簡単な指令すら失敗に終われば、秀一さんも含め、一度アメリカに戻されるかもしれないそうだ。