第25章 異次元の狙撃手、その裏側。
「ただいまー・・・コナンくん来てるの?」
「あっ!かおりさん!おかえりなさーい。お邪魔してます」
「随分早かったな」
「それのせいですよ・・・お客さん全っ然来ないから早上がりです・・・何か分かりましたか?」
彼らは、元狙撃兵の遺体の状況を聞くに、そもそも彼が起こしたと思われていたこれまでの事件は、彼の犯行ではない可能性が高く、彼と親しい何者かが彼の敵討ちを肩代わりして行った犯行なのでは、と考えているようだった。
それにしても、次の犯行現場が全く予想できない、と頭を捻っている。
「ボク明日、世良のねーちゃんとこれまでの現場に行ってくるよ」
「・・・真純にあまり無茶はさせないでくれよな」
「ボクが言っても聞かないよ・・・むしろボクを守るって世良のねーちゃんの方が意気込んでる位だからね・・・」
「全く・・・誰に似たんだか・・・」
・・・秀一さんだって“退け”と言われて退くタイプじゃないでしょうに。
わたしはキッチンへ入り、夕食の煮物を作り始める。
次第に醤油と砂糖の匂いが家の中に漂い始め、切れ者二人の鼻腔も刺激し始めたようだ。
物騒な話は終わったのか、彼らがキッチンを覗きに来た。
「美味そうな匂いだな・・・お、これはアレだな」
「そう!今日は秀一さんの好きなやつですよー」
「これはお腹空いてきちゃうね」
「ボウヤもウチで食っていくか?かおりのメシは中々美味いぞ」
「ううん!ボクのは蘭ねーちゃんが作ってくれてるから大丈夫ー!」
「ふふっ」
「そうか。それは帰らねばならんな」
秀一さんと目を合わせ、コナンくんに視線を戻す。
きっと今のわたしの顔はニヤついてる。
「蘭ちゃんのごはん、好き?」
「うん!いつも美味しいよ!」
「ボウヤ、たまには彼女の料理を褒めてやるといいぞ」
「へ?どうして?」
「女の機嫌が良くなる」
「ちょっと秀一さん・・・まあ、その通りだけど」
「ふーん・・・そうしてみるよ」
その後彼らはもう少しだけ物騒な話をして。
わたしは今朝干した洗濯物を片付け、残りのおかずの準備に取り掛かる。
コナンくんが帰る頃には、煮物にぼちぼち味も染みたと思う。温め直して晩御飯の支度を整え、秀一さんと二人食卓に着く。