第24章 交わらない男達の二日間
小さな音を立てて唇が離れる。
予期せぬ口付けに、まだ思考の整理が追いついてこない中。
猫にするように喉を指で撫でられて、あごの先を摘まれる。
「あ、の・・・昴さん?」
「今夜は一緒に夜更かしするんですよね」
「そのつもりです・・・?」
「実は面白い物を持ってきているんです。酔い覚ましに少し散歩しながら見てみませんか?」
「はい・・・?」
よく分からないけど、昴さんと一緒に外に出た。
まさか外でおかしな事に及んだりはしないよな、なんて不安が少し過ぎったりもする・・・
思った以上に酔ってるみたいで、歩くと脚がほんの少しよろけた。それを昴さんにクスクス笑われながら、昼間遊んだ河原までやってきて、大きな石に並んで腰掛ける。
風が吹くと少し涼しいくらいで。昼間の暑さが嘘のようだ。
「面白い物ってなんですか?」
「・・・名探偵の秘密道具です」
昴さんがポケットからボールペンのような物を取り出した。何が面白いのか。顔面を“?”にして手元を覗き込む。
「これで謎が解けるの?」
「これだけでは解けません・・・しかしこれを使うと、人を一時的に眠らせる事ができます」
「え!」
「麻酔針が仕込まれているんですが中々の代物ですよ。皮膚に刺した跡も残らなければ、体内に薬品の痕跡も残さず、連続投与しても副作用の心配も無い」
「なんか恐いんですけど・・・」
「面白いのはここからです。毛利探偵はいつもこれで眼鏡のボウヤに眠らされて、事件を解決しているそうです。声はあの蝶ネクタイでボウヤが」
「・・・なにそれ」
コナンくんが変声機を持ってるのは知ってる。
でもそれは新一くんの声で電話したりする為だと思ってた・・・
(たしかに、毛利探偵の声を出して、コナンを休ませると学校に電話してる所も見たけれど)
そしてなるほど、新一くんの噂を聞かなくなってからだ。眠りの小五郎の名前をよく耳にするようになったのは。そういうカラクリか。
「それで、その麻酔針をなんで昴さんが?」
「ポアロの彼と丸一日過ごすことになると優作さんに話した所、護身用にどうかと勧められました」
「ヤバくなったら刺せと?」
「ええ」
「やっぱり怖いんですけど・・・」
「怖くなんてありませんよ、あのボウヤも使っているんですから」
「あの子はボウヤじゃないでしょ・・・」