第24章 交わらない男達の二日間
「おかえりー!」
「おかえりなさい」
「すみません、勝手にかおりさんお借りしてました」
「あれ?梓さんは?」
「彼女は寝てしまったので寝室に運びました。二人で散歩でもしてたんですか?」
「そっかー・・・散歩もだけど星かな?すっごい綺麗でしたよ!」
「あらそうなの!」
「せっかくですしご夫婦で見てきたらどうですか?」
「よし、行こうか、ママ」
マスターはゆっくり腰を上げると、ママのそばに近寄り、手を取って二人で外へ出て行く。
ママは若いイケメンが良いとか言うけど、なんだかんだ夫婦仲はよくて。ママとマスターは、いくつになっても恋人みたいな・・・憧れの夫婦だ。
夜はまだまだ長い。
さっき零とはあんな話をしたばかりだけど・・・それは一旦忘れて、今夜わたしには、昴さんの素顔を安室さんから守るという大仕事がある。
(役に立てるかは分からないけど立たなければいけない)
「ワインでも飲みますか?梓さんがいる時は出さない方がいいと言われていたので隠しておいたんですが」
「梓さんにワイン飲ませたらすぐ意識無くしますからね、正解ですよ。まあ飲まなくても既に今日は夢の中みたいですけど」
昴さんがキッチンの方から声をかけてきて、安室さんが応える。
わたしもキッチンへ小走りで向かう。ワインはあれこれ多めに買ってきたはず。
「赤?白?」
「今夜は赤でしょうか」
「実は僕・・・赤ワインは不得手なんです。できれば白で」
・・・零は安室透の時でも“赤”が嫌いなようだ。
(不得手と言うのはおそらく嘘だ)
「じゃあ白で。いいですよね?昴さん。みんなで飲みたいし」
「・・・ええ、構いませんよ。かおりさん、カップを用意してください」
「はーい」
大きなテーブルにプラスチックのカップ(キャンプだからね)が三つ、ワインボトルが一本。
三人で飲み始めるけど、なんだかテーブルの上が酷く殺風景に感じる。
安室さんも同じように思ったのか、嬉しい提案をされる。
「何かつまめるもの作りましょうか・・・」
「いいの?安室さん!・・・食べたーい!」
「任せてください」
安室さんがキッチンへ飲みかけのカップを手に向かう。
バーベキューの時に余った食材で何やら作ってくれるみたいだ。
・・・絶対美味しいに違いない。顔が自然と綻ぶ。