第24章 交わらない男達の二日間
安室透と梓さんのいる大きな岩に着き、わたし達も二人のいる所まで登る。一番高い所は水面から三メートルはあるかも。
「ボートなんてあったんですねー!私も乗りたーい!」
「どうぞー!そこで借りてきたんです」
「でも帰りはまたかおりさんに譲ってあげてくださいね、彼女泳げませんから」
「ちょっと昴さん!・・・別に泳げない訳じゃありませんから」
「それならここからかおりさんを川に投げますが平気ですか?」
昴さんに身体をひょいと横抱きにされ、そのまま岩の縁まで連れていかれる。
「投げるって・・・きゃっ!ちょっと!昴さんっ!」
「溺れたら僕が助けに行きますよ」
「嘘!安室さんまで!えっ!」
「アハハっ!かおりさん可愛いー!」
「梓さんまで・・・!待って!」
「いきますね」
わたし以外の三人が目配せをし合っている。
・・・これは昴さん、本当に投げる気だ。
身体が後ろに揺れて、前に放り出される・・・
「わっ・・・ーーーっ!」
身体が宙に浮いて、しばらく。ザブんと格好悪くお尻から着水し、水中に沈む。
・・・結構深い。上を見れば思った以上に水面が遠い。
直後、すぐ横に沢山の水泡と共に安室透が飛び込んで来て、彼は一度下の方まで沈んで、スっと浮いてきた。
ってそんなの見てる場合じゃない。
上へ向かって大きく水をかいたら、おかしい、ひとかきで一気に水面まで浮上できた。
というのも安室さんがわたしを抱えるように一緒に上がってくれたからなんだけど・・・
彼はそのままわたしの足のつく所まで連れて行ってくれて。
わたしの無事を確認したのか、昴さんも梓さんも上から飛び降りてくる。
安室透と二人、水面から頭だけを出して、なんとなく見つめ合ってしまって。
なんか・・・久しぶりに彼の顔をこんなに近くで見た気がする。久しぶりな上に、水に濡れた彼は妙に色っぽくて、少し戸惑う。
「ありがと・・・安室さん」
「・・・可愛い。可愛すぎる。泳げないとか」
「あのね、少しは泳げるんだって」
「まあ、泳げても泳げなくても、どっちでもいいんだけどな」
頬に付いていたらしい髪を彼の指が取り去り、更に親指がわたしの下唇を撫でる。
あ・・・と思った時にはキスをされていた。